協議離婚にかかる費用はどれくらい?弁護士への依頼から公正証書作成までの流れと費用感
協議離婚を考えているあなたにとって、費用がどれくらいかかるのかは切実な問題でしょう。離婚届を提出するだけなら費用は0円ですが、実際には弁護士への相談料や公正証書の作成費など、様々な費用が発生する可能性があります。
協議離婚の交渉を弁護士に依頼する場合、着手金と成功報酬を合わせて約33〜66万円が相場です。さらに慰謝料や養育費の交渉が成功した場合、獲得額の11〜22%程度が追加で必要になります。公正証書を作成する場合は5,000円から数万円の公証人手数料もかかります。
目次
協議離婚とは?
協議離婚は夫婦が話し合いで離婚条件を決めて成立させる離婚方法です。日本の離婚の約87%が協議離婚で成立しています。離婚届を市区町村役場に提出すれば手続きが完了します。
協議離婚と調停離婚には4つの違いがあります:
| 項目 | 協議離婚 | 調停離婚 |
|---|---|---|
| 手続き | 離婚届の提出のみ | 家庭裁判所への申立て |
| 期間 | 最短1日 | 平均3ヶ月〜1年 |
| 費用 | 0円 | 約3,000円 |
| 強制力 | なし | あり |
協議離婚の手続きは離婚届に必要事項を記入して2名の証人の署名を得るだけです。離婚届は役所で受け取るかインターネットでダウンロードできます。本籍地以外の役所に提出する場合は戸籍謄本(450円)が必要です。
協議離婚にかかる費用の全体像
協議離婚を検討する際、費用面での不安を感じる方も多いでしょう。実際には、協議離婚自体は無料で行えますが、状況によって追加費用が発生するケースがあります。
基本的には費用ゼロ!
協議離婚は夫婦間の話し合いで成立すれば費用は0円です。離婚届を役所に提出するだけで手続きが完了し、提出時の手数料もかかりません。離婚届は市区町村役場で無料配布されており、インターネットからダウンロードすることも可能です。
日本の離婚の約87%がこの協議離婚で成立しており、最短1日で手続きが完了します。夫婦双方が離婚条件に合意できれば、弁護士や裁判所を介さずに離婚が成立するため、経済的負担を最小限に抑えられます。
ただし、本籍地以外の役所に離婚届を提出する場合は、戸籍謄本(450円)の添付が必要です。また、離婚届には2名の証人の署名が必要となる点も覚えておきましょう。
費用が発生するケースとは?
協議離婚でも、夫婦間の話し合いが難航したり、将来のトラブルを防ぐために専門家のサポートを受ける場合は費用が発生します。
弁護士による仲介
夫婦だけでは冷静な話し合いができない場合、弁護士に交渉を依頼できます。弁護士費用の相場は20万円〜60万円で、内訳は着手金20万〜40万円、報酬金20万〜40万円です。財産分与や慰謝料を獲得した場合は、経済的利益の10〜20%が追加で発生します。
公正証書の作成
離婚条件を公正証書にすることで、養育費や慰謝料の支払いに法的強制力を持たせられます。公証人手数料は5,000円〜23,000円で、取り決める金額によって変動します。強制執行認諾文言を付けることで、支払い滞納時に給与差し押さえが可能になります。
法的助言や文書作成が必要な場合
離婚協議書の作成や法的妥当性の確認を専門家に依頼する場合、行政書士なら3万〜10万円、弁護士なら5万〜11万円程度かかります。特に養育費や財産分与など複雑な取り決めがある場合は、専門家のサポートを受けることでトラブルを防げます。
弁護士に依頼した場合の費用相場
協議離婚で弁護士に依頼する場合、総額40万〜80万円程度の費用がかかります。これに加えて、慰謝料や財産分与を獲得した場合は経済的利益の10〜20%が報酬として発生します。
一般的な法律事務所への依頼
法律事務所への相談料は30分5,000円〜1万円が相場ですが、初回60分無料の事務所も多く存在します。着手金は20万〜40万円で設定されており、事案の難易度によって変動します。
報酬金は離婚成立時に20万〜30万円かかります。財産分与や慰謝料を獲得した場合、その金額の10〜20%が追加報酬となります。親権獲得の場合は10万〜20万円、養育費の取り決めでは合意金額の2〜5年分の10〜20%が加算されます。
日当は裁判所への出廷1回あたり3万〜5万円程度です。実費として郵送代、交通費、収入印紙代などが数千円〜数万円かかります。
交渉のみ依頼するケース(比較的低額)
交渉支援のみを依頼する場合、着手金は10万〜20万円程度に抑えられます。弁護士は書面作成や電話・メールでの交渉を中心に行い、直接の面談は最小限となります。
報酬金も10万〜20万円程度と比較的低額です。ただし、交渉が長期化したり、相手方が弁護士を立てた場合は追加費用が発生することがあります。
実費は郵送代や通信費など数千円程度で済みます。公正証書を作成する場合は、公証人手数料として5,000円〜2万3,000円が別途必要です。交渉のみの依頼でも、相手の住所調査で弁護士照会を利用する場合は5,000円〜数万円の手数料がかかります。
モラハラ・複雑案件のケース別目安
モラハラやDVが絡む案件では、着手金が30万〜50万円と高額になります。証拠収集や保護命令申立てなど、通常の協議離婚より手続きが複雑になるためです。
財産分与で1,000万円以上の資産が対象となる場合、報酬金は獲得額の15〜20%に設定されることが多くなります。慰謝料請求では100万〜500万円の判例が多く、その20%程度が成功報酬として加算されます。
精神的損害の立証には医師の診断書や専門家の意見書が必要となり、鑑定費用として10万〜30万円かかることもあります。調停や裁判に発展する可能性が高く、総額100万〜150万円の費用を見込んでおく必要があります。
法テラスを利用した場合の費用
協議離婚の弁護士費用を抑えたいあなたにとって、法テラスの民事法律扶助制度は強力な選択肢となります。収入と資産の要件を満たせば、通常より大幅に安い費用で専門的な法律サービスを受けられます。
代理援助での弁護士費用
法テラスの代理援助を利用すると、着手金と実費の合計は約84,000円〜126,000円です。一般の法律事務所では100,000円〜250,000円かかることを考えると、費用負担は半額程度に抑えられます。離婚調停の場合は約13万円、離婚訴訟では約25万円が目安となります。
収入要件は単身世帯で月収182,000円以下、2人世帯で251,000円以下です。資産要件は単身で180万円以下、2人世帯で250万円以下となっています。離婚案件では配偶者の収入を合算しないため、別居中の方でも利用しやすい制度設計になっています。
成功報酬の目安
法テラス基準での成功報酬は、基本報酬が約8万円と設定されています。慰謝料や財産分与を獲得した場合の追加報酬は獲得額の10%程度です。一般の弁護士事務所では基本報酬だけで30万円以上、獲得額に対する報酬率も15〜20%が相場となっています。
養育費の取り決めに成功した場合、法テラスでは獲得額の2年分の10%程度が報酬となります。親権獲得の報酬は5万〜10万円程度で、一般事務所の10万〜20万円と比べて半額程度に設定されています。精神的損害賠償は100万円〜1000万円と幅がありますが、報酬率は一律10%程度です。
費用の分割・返済負担の軽さ
法テラスの立替制度では、契約締結の2ヵ月後から返済が始まります。月々の返済額は5,000円〜10,000円程度で、3年以内の完済が原則です。経済状況に応じて返済額の減額や猶予も可能で、生活保護受給者は返済免除の対象となります。
返済期間中に経済状況が悪化した場合、申請により返済の一時停止も認められます。離婚後の生活再建を優先できる制度設計となっており、母子家庭や父子家庭の方にとって利用しやすい仕組みです。医療費や教育費などの支出が見込まれる場合、相当額が資産から控除される特例もあります。
公正証書作成にかかる費用
協議離婚で決めた養育費や慰謝料の支払いを確実にするため、公正証書の作成を検討する方が多くいます。公正証書は公証人が作成する公文書で、強制執行認諾文言を付けることで裁判なしに財産の差し押さえが可能になります。
金銭の取り決めを文書化する場合に必要
公正証書作成費用は、慰謝料・財産分与・養育費など金銭の取り決めがある場合に発生します。離婚協議書を公正証書にすることで、相手が支払いを怠った際に給与や預金口座を差し押さえられます。
公証役場での手続きには、夫婦両名の実印と印鑑証明書(各200〜400円)、戸籍謄本(450円)、本人確認書類が必要です。弁護士に原案作成を依頼する場合は5万〜11万円、公証役場への同行を依頼すると追加で3万〜5万5000円かかります。
養育費の取り決めでは、月額5万円を10年間受け取る場合、総額600万円として手数料を計算します。公正証書があることで、支払い遅延の抑止力にもなります。
報酬額に応じた手数料の目安
公証人手数料は取り決めた金額によって段階的に設定されています。
| 取り決め金額 | 公証人手数料 |
|---|---|
| 100万円まで | 5,000円 |
| 200万円まで | 7,000円 |
| 500万円まで | 11,000円 |
| 1,000万円まで | 17,000円 |
| 3,000万円まで | 23,000円 |
| 5,000万円まで | 29,000円 |
養育費は最長10年分の金額で計算され、それ以上の期間でも手数料は増えません。財産分与1,000万円と養育費600万円(月5万円×10年)の場合、合計1,600万円として約23,000円の手数料となります。
複数の取り決めがある場合は合算して計算するため、全体の金額を把握してから手続きを進めましょう。
協議離婚の費用を抑える方法
協議離婚の費用は工夫次第で大幅に削減できます。以下の2つの方法を実践することで、経済的負担を最小限に抑えながら離婚手続きを進められます。
1. 無料相談の活用
市役所や法律相談センターが実施する無料法律相談を利用すれば、弁護士費用を削減できます。初回60分無料の法律事務所も多く、複数の事務所で相談を受けることで費用比較が可能です。
相談前に質問内容をメモにまとめておくことで、限られた時間を有効活用できます。離婚条件や養育費の相場、必要書類のリストなど、具体的な質問を準備しましょう。
NPO法人が提供する離婚相談サービスも活用できます。電話相談なら交通費もかからず、仕事の休憩時間に相談できるメリットがあります。
無料相談で得た情報を基に、自分で対応できる部分と専門家に依頼する部分を明確に分けることで、総費用を抑えられます。
2. 自分でできる手続きと準備
離婚届の作成や必要書類の準備は自力で行えます。離婚届は市区町村役場で無料配布されており、インターネットからダウンロードも可能です。
財産分与リストの作成、養育費の計算、離婚協議書の下書きなど、事前準備を自分で行うことで弁護士への依頼時間を短縮できます。裁判所のウェブサイトには養育費算定表が公開されており、標準的な金額を確認できます。
戸籍謄本や住民票の取得も自分で行えば、弁護士に依頼する実費を節約できます。本籍地が遠方の場合は郵送請求も可能で、手数料は450円程度です。
公証役場での手続きも、事前に電話で必要書類を確認し、自分で準備することで代行費用3〜5万円を節約できます。
協議離婚で相手に請求できる費用
協議離婚では、夫婦の話し合いで合意すれば、婚姻費用・財産分与・養育費・慰謝料の4つの費用を相手に請求できます。それぞれの費用には法的根拠があり、適切な金額を把握することで円滑な交渉が可能になります。
婚姻費用と財産分与
婚姻費用は、別居中でも離婚成立まで収入の多い配偶者が少ない配偶者に支払う生活費です。居住費・生活費・子供の教育費が含まれ、婚姻費用分担請求調停を申し立てた時点から請求できます。過去分は原則請求できません。
財産分与は、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた共有財産を離婚時に分配する制度です。対象となる財産には以下があります:
- 預貯金・株式・有価証券
- 退職金(婚姻期間中の勤務分)
- 生命保険の解約返戻金
財産分与の割合は原則2分の1ずつですが、夫婦の貢献度によって変更される場合があります。独身時代の預貯金や親族からの相続・贈与財産は特有財産として対象外です。
養育費の取り決め
養育費は子供の扶養のための費用で、子供が経済的に自立するまで支払い続ける義務があります。金額は両親の収入と子供の人数・年齢で決まり、裁判所の養育費算定表が基準となります。
養育費の取り決めでは以下の項目を明確にします:
- 月額の支払金額(子供1人あたり2万〜8万円が相場)
- 支払期間(成人まで、または大学卒業まで)
- 支払方法(振込先口座・支払日)
- 特別費用(入学金・医療費)の負担割合
公正証書を作成すると、支払いが滞った場合に給与差押えなどの強制執行が可能になります。養育費の取り決めは子供の将来に直結するため、慎重に検討することが重要です。
慰謝料請求の条件
慰謝料は、配偶者の不法行為によって精神的苦痛を受けた場合に請求できる賠償金です。協議離婚での慰謝料相場は以下のとおりです:
慰謝料請求には証拠が必要です。不貞行為ならホテルの領収書や写真、DVなら診断書や録音データが有効です。証拠がない場合、相手が任意で支払いに応じれば受け取れますが、金額交渉が難航する可能性があります。
慰謝料の時効は離婚成立から3年です。分割払いの場合は、支払い遅延時の遅延損害金も取り決めておくことで、確実な回収が期待できます。
離婚後に必要となる費用と対策
離婚後の生活では収入減少と支出増加が同時に発生するため、具体的な対策を立てることが重要です。生活費の見直しと公的支援制度の活用により、経済的負担を軽減できます。
生活費と住居費の見直し
離婚後の単身世帯の平均消費支出は月額約17万円です。収入が減少する場合、固定費から優先的に削減します。住宅ローンが残る場合、負担割合を明確にすることで月々の支払いを3〜5万円削減できるケースもあります。
養育費の支払いがある場合、養育費・婚姻費用算定表に基づいて適正額を確認します。年収400万円の場合、子ども1人(14歳以下)で月額2〜4万円が相場です。財産分与で得た資金を生活費の補填に充てる際は、3〜6ヶ月分の生活費を緊急予備費として確保します。
食費や通信費などの変動費も見直し対象です。単身世帯の食費平均は月額4万円程度ですが、自炊中心にすることで2万円程度まで削減可能です。
公的支援制度の活用
ひとり親世帯は児童扶養手当を受給できます。所得制限内であれば、子ども1人で月額最大44,140円(2024年度)が支給されます。児童手当と併用可能で、中学生以下の子どもがいる場合は月額1万円または1万5千円が加算されます。
医療費助成制度により、親子の医療費負担が軽減されます。自治体によって異なりますが、18歳まで医療費が無料または一部負担となります。住宅支援として、公営住宅の優先入居や家賃補助制度を利用できる自治体もあります。
生活困窮者自立支援制度では、就労支援や家計改善支援を無料で受けられます。社会福祉協議会の緊急小口資金では、最大10万円を無利子で借入可能です。
まとめ
協議離婚は手続き自体はシンプルですが、あなたの状況によって必要な費用は大きく変わってきます。弁護士への依頼や公正証書の作成など、将来のトラブルを防ぐための投資と考えることが大切です。
費用面で不安がある場合は、法テラスの利用や無料相談を積極的に活用してください。あなたの収入状況によっては、想像以上に費用を抑えられる可能性があります。
離婚は人生の大きな転機です。目先の費用だけでなく、離婚後の生活設計まで視野に入れて準備を進めることで、新しいスタートをより確実なものにできるでしょう。
必要な情報を集め、利用できる支援制度を把握したうえで、あなたにとって最適な選択をしてください。
