セックスレスの離婚率はどれくらい?夫婦関係を立て直すために知っておきたいこと

パートナーとの夜の営みが途絶えて数ヶ月。あなたは「これって普通なの?」と不安を感じていませんか。日本性科学会の定義では、1ヶ月以上性的接触がない状態をセックスレスとしています。

セックスレスの定義と離婚率の実態

パートナーとの関係に不安を感じているあなたにとって、セックスレスという言葉の正確な意味と実際の離婚率を知ることは重要です。ここでは客観的なデータと統計を基に、セックスレスが夫婦関係に与える影響を詳しく見ていきます。

セックスレスとは何か

セックスレスは、日本性科学会の定義によると「特殊な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交やセクシャルコンタクトが1ヶ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合」を指します。法律上の明確な定義はありませんが、裁判では1年以上夫婦生活がない場合にセックスレスと判断される傾向があります。

セックスレスが始まる時期は結婚1年目から3年目が59.3%と最も多く、主な原因として「育児や仕事の疲れ」が挙げられています。妊娠・出産後の体調変化、子育てによる疲労、仕事のストレスなどが複合的に影響します。男性の46.2%、女性の20.1%がセックスレス期間中に浮気を経験しているというデータもあり、夫婦関係の危機を示す重要なサインとなっています。

実際の離婚率データと統計

セックスレスによる離婚率は約25.2%という調査結果が報告されています。つまり、セックスレス経験者の4人に1人が離婚に至っている計算です。女性の離婚率は男性より10%以上高く、女性のほうが離婚に対して現実的な姿勢を持つ傾向があります

厚生労働省の人口動態統計(2024年速報値)によると、年間離婚件数は約19万4000組です。司法統計では、家庭裁判所で離婚調停を申し立てた動機として「性的不調和」を挙げた割合は、夫が10.5%、妻が6.3%となっています。欧米の調査では、セックスレス夫婦の74.2%が離婚に至るというデータもありますが、文化差があるため日本にそのまま当てはまるわけではありません。

離婚原因としての割合

裁判所が公表する離婚理由ランキングでは、「性的不調和(セックスレスを含む)」が第8位にランクインしています。セックスレスそのものが直接的な離婚原因となる割合は約25%ですが、離婚を考えたことがある夫婦は30%以上にのぼります。

民法770条5号では「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が離婚事由として定められており、最高裁判例(昭和62年9月2日決定)では継続的な性交拒否を重大事由として離婚を認めたケースも存在します。セックスレスは単なる身体的な問題だけでなく、精神的な不満やコミュニケーション不足として表れることが多く、夫婦間のスキンシップの希薄化が根底にあることが判明しています。

セックスレスが離婚につながる主な理由

セックスレスが離婚に至る背景には、単なる性的欲求の問題だけでなく、夫婦関係の根幹を揺るがす複数の要因が絡み合っています。株式会社Liamの調査では、セックスレス経験者の約25.2%が実際に離婚しており、その背景には次のような深刻な問題が潜んでいます。

浮気や不倫のリスク増加

性的な満足が得られない状況が続くと、パートナー以外の異性に心が向きやすくなります。男性の46.2%、女性の20.1%がセックスレス期間中に浮気を経験したという調査結果があり、特に男性の浮気率の高さが際立っています。

配偶者からの性的拒否が続くと「自分は愛されていない」という感情が芽生え、職場の同僚や友人からの優しさに惹かれやすくなります。最初は相談相手として始まった関係が、次第に感情的な依存へと発展し、最終的に不貞行為へと至るケースが多く報告されています。

実際の離婚調停でも、セックスレスが原因で始まった不倫が決定的な離婚理由となる事例が増加しています。性的欲求の解消だけでなく、精神的な支えを求めて第三者との関係を深めてしまうことで、修復不可能な状態まで夫婦関係が悪化します。

夫婦間の信頼関係の低下

セックスを拒否される側は、自分の魅力や存在価値を否定されたと感じ、深い心の傷を負います。「もう異性として見られていない」という思いが募り、相手への不信感が日々蓄積されていきます。

性的な拒否は相手のプライドを著しく傷つける行為であり、自己肯定感の低下を招きます。拒否された側は「なぜ自分だけが我慢しなければならないのか」という不公平感を抱き、パートナーへの愛情が急速に冷めていきます。

信頼関係の崩壊は、セックスレスの問題を話し合うことすら困難にします。お互いが本音を言えない状況が続き、日常的なコミュニケーションまで希薄になっていきます。結婚1年目から3年目にセックスレスが始まった夫婦の多くが、5年以内に離婚を検討し始めるという統計データもあります。

精神的な結びつきの希薄化

セックスは単なる肉体的行為ではなく、夫婦の精神的・感情的なつながりを深める重要なコミュニケーション手段です。この機会が失われると、パートナーとの心理的距離が徐々に広がっていきます。

日常的なスキンシップの減少も同時に進行し、手をつなぐ、ハグをするといった基本的な愛情表現すら避けるようになります。寝室を別にする夫婦も増え、物理的な距離が精神的な距離をさらに広げる悪循環に陥ります。

育児や仕事の疲れを理由にセックスレスが始まった場合でも、長期化すると「家族」ではあっても「夫婦」としての意識が薄れていきます。お互いを異性として認識できなくなり、同居人のような関係性へと変化してしまいます。この状態が続くと、夫婦としての将来を共に歩むビジョンが描けなくなり、離婚という選択肢が現実味を帯びてきます。

セックスレスで離婚が認められるケース

セックスレスを理由とした離婚は、夫婦の話し合いで合意できれば成立しますが、裁判になると法的要件を満たす必要があります。民法770条に定められた離婚事由のうち「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかが争点となります。

法的に離婚が成立する条件

セックスレスで離婚が認められるには、民法770条5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」への該当が必要です。裁判所は夫婦の性生活を「婚姻の基本となるべき重要事項」と判断しており、最高裁昭和62年9月2日決定では継続的な性交拒否を重大事由として離婚を認めています。

認定には以下の要素が考慮されます:

  • セックスレス期間: 最低1年以上の継続
  • 拒否の態様: 一方的かつ正当な理由のない拒絶
  • 改善努力の有無: 話し合いや専門家への相談歴
  • 夫婦関係の破綻度: 別居期間や日常会話の断絶

結婚後一度も性交渉がない場合や、EDなどの性機能障害を隠していた場合は、期間が1年未満でも離婚事由として認められやすくなります。

慰謝料請求が可能な場合

セックスレスによる慰謝料請求が認められるには、相手方の「有責性」の立証が必要です。慰謝料相場は0〜100万円程度ですが、以下のケースでは請求が認められやすくなります。

慰謝料が認められる典型例

  • 性交渉を求めても理由なく拒否し続けた
  • セックスレス中に不貞行為があった
  • 同性愛者であることを隠して結婚した
  • 性交不能を故意に隠していた

慰謝料額は婚姻期間、セックスレスの期間、精神的苦痛の程度、相手の収入などを総合的に判断して決定されます。セックスレスに加えてDVやモラハラがある場合は、相場より高額な慰謝料が認められる可能性があります。証拠として、拒否された日時や状況を記録した日記、メールやLINEのやり取りが有効です。

離婚が認められない状況

セックスレスがあっても、以下の状況では離婚が認められにくくなります。裁判所は夫婦関係の総合的な破綻度を重視するため、性生活の問題だけでは不十分と判断される場合があります。

離婚が困難なケース

  • 双方がセックスレスを納得している
  • 一時的な理由(授乳期、病気療養中)による
  • セックスレス以外の夫婦関係が円満
  • 長期間セックスレスでも婚姻生活を継続している

特に10年以上セックスレスでも同居を続けている場合、「性交渉なしでも婚姻関係を維持できている」と判断される可能性があります。育児疲れや仕事のストレスによる一時的なセックスレスは、改善の余地があるとして離婚事由にならないケースが多いです。

セックスレスになりやすい夫婦の特徴と時期

セックスレスは特定の時期や状況で発生しやすく、夫婦の関係性やライフスタイルと密接に関連しています。調査データによると、約59.3%の夫婦が結婚1年目から3年目にセックスレスを経験しており、その背景には複数の要因が絡み合っています。

結婚後の経過年数との関係

結婚1年目から3年目にセックスレスになる夫婦は全体の59.3%を占めています。新婚期のロマンチックな関係から日常的な夫婦関係への移行期に、性的関心が急速に低下するケースが多く見られます。女性では67.1%、男性では51.9%がこの期間にセックスレスを経験しています。

結婚4年目から6年目には16.8%(女性)と24.4%(男性)がセックスレスになり、7年目から9年目では4.0%(女性)と9.6%(男性)まで減少します。結婚10年目以降でも13.1%の夫婦が新たにセックスレスに陥っており、長期的な関係の変化が影響していることが分かります。

時間の経過とともに「恋人」から「家族」への関係性の変化が起こり、異性としての魅力を感じにくくなる傾向があります。特に子どもが生まれた後は、親としての役割が優先され、夫婦としての時間が減少することで性的関係が希薄化しやすくなります。

コミュニケーション不足の影響

セックスは夫婦間の重要なスキンシップであり、コミュニケーション手段の一つです。日常会話が減少している夫婦ほどセックスレスに陥りやすく、性的な話題を避けることで問題が深刻化する傾向があります。

セックスレスが原因で浮気に走る割合は男性で46.2%、女性で20.1%に達しており、コミュニケーション不足が不倫リスクを高めています。パートナーからの拒否が続くと「愛されていない」という感情が生まれ、第三者に心の拠り所を求めるケースが増加します。

キスやハグなどの日常的なスキンシップが減少すると、身体的な距離が心理的な距離に変わります。お互いの感情や欲求を言葉にできない関係では、セックスレスの改善が困難になり、夫婦関係全体の悪化につながります。65.9%の夫婦がセックスレスの改善を試みていますが、コミュニケーション不足が根本にある場合は効果が限定的です。

ライフスタイルの変化による要因

育児や仕事の疲れがセックスレスの最大の原因となっており、身体的・精神的な疲労が性欲減退につながっています。特に女性は出産後のホルモンバランスの変化や授乳による疲労で、性的欲求が著しく低下することがあります。

仕事のストレスや長時間労働により、夫婦が一緒に過ごす時間が減少しています。平日は仕事で疲れ果て、週末は家事や育児に追われる生活では、セックスの優先順位が下がってしまいます。価値観の違いや生活リズムのズレも、セックスレスを加速させる要因です。

妊活のプレッシャーもセックスレスの原因になります。義務的な性行為が続くと、セックスが「作業」になり、楽しみや愛情表現としての側面が失われます。男性側の精力減退や勃起不全(ED)も年齢とともに増加し、セックスレスの一因となっています。

セックスレス解消と離婚回避の方法

セックスレスによる離婚率25.2%という現実を前に、多くの夫婦が関係修復の道を模索しています。実際に65.9%の夫婦が何らかの改善策を試みており、適切な対処によって関係回復は十分可能です。

夫婦間の対話とコミュニケーション改善

セックスレスの根本原因は、多くの場合コミュニケーション不足にあります。調査データによると、セックスレスの原因第2位は「コミュニケーション不足」で、男性18.6%、女性14.8%が挙げています。

対話を始める際は、相手を責めずに自分の気持ちを「私は〜と感じる」という形で伝えます。例えば「最近スキンシップが減って寂しい」といった具体的な感情を共有することで、相手も本音を話しやすくなります。

重要なのは、セックスの話題を避けずに月1回以上は率直に話し合うことです。お互いの疲労度や体調、精神状態を把握し、無理のないペースを見つけていきます。夫婦の59.3%が結婚1〜3年目にセックスレスを経験することから、早期の対話が鍵となります。

専門家によるカウンセリングの活用

夫婦だけでの解決が困難な場合、第三者の専門家によるカウンセリングが有効です。カウンセラーは中立的な立場から問題の本質を整理し、具体的な解決策を提示してくれます。

カウンセリングでは、セックスレスの背景にある心理的要因や関係性のパターンを分析します。例えば、育児疲れが原因の場合は家事分担の見直し、精神的な距離が原因の場合は信頼関係の再構築など、個別の状況に応じたアプローチを行います。

専門家への相談は恥ずかしいことではありません。むしろ夫婦関係を大切にする証拠です。婦人科医やセックスセラピストなど、医学的観点からのアドバイスも受けられます。早期の相談により、問題が深刻化する前に解決の糸口を見つけられます。

日常生活での工夫と対策

セックスレス改善で最も効果的とされるのは「スキンシップを増やす」ことです。調査でも改善策の第1位に挙げられています。手をつなぐ、ハグをする、マッサージをするなど、小さな身体接触から始めます。

夫婦2人だけの時間を意識的に作ることも重要です。子どもの就寝後や週末の数時間でも、パートナーと向き合う時間を確保します。疲労軽減のため、家事の外注やベビーシッターの利用も検討します。

寝室環境の改善も効果的です。川の字寝を見直し、夫婦の寝室を別にするか、子どもの寝室を分けます。リラックスできる空間作りとして、間接照明やアロマを活用し、スマートフォンは寝室に持ち込まないルールを設けます。

日本におけるセックスレスの背景と社会現象

日本のセックスレス問題は単なる個人的な悩みではなく、社会全体に広がる現象として認識されています。2024年の調査では日本の夫婦の64.2%がセックスレス状態にあり、2004年の31.9%から倍増しています。

国際的に見た日本の結婚—セックスの頻度の少なさ

日本の夫婦の性交渉頻度は国際比較で最下位レベルに位置しています。世界平均では週1回以上の性交渉がある夫婦が約45%を占めますが、日本では月1回未満が64.2%に達します。欧米諸国と比較すると性交渉頻度は3分の1以下で、アジア圏内でも韓国や中国より低い水準です。

この現象の背景には日本特有の労働環境があります。平均労働時間が年間1,700時間を超え、帰宅時間は午後9時以降が一般的です。疲労が蓄積し、夫婦の時間を確保できない状況が慢性化しています。

文化的要因も影響しています。性的話題をタブー視する傾向があり、夫婦間でも性について率直に話し合う機会が限られます。欧米では夫婦カウンセリングの利用率が25%を超えますが、日本では3%未満に留まります。

住環境の問題も無視できません。子どもとの同室就寝率が70%を超え、プライバシーの確保が困難な状況です。欧米では子ども部屋での就寝が一般的ですが、日本では川の字就寝が続くケースが多く見られます。

まとめ

セックスレスが離婚に与える影響は決して軽視できません。4組に1組という離婚率が示すように、性生活の不一致は夫婦関係の根幹を揺るがす深刻な問題です。

あなたが今直面している状況は、決して珍しいものではありません。日本の夫婦の6割以上が同じような悩みを抱えています。重要なのは、この問題から目を背けずに向き合うことです。

パートナーとの関係修復は十分可能です。まずは相手を責めることなく、あなたの素直な気持ちを伝えてみてください。小さなスキンシップから始めることで、少しずつ距離を縮めることができるでしょう。

必要であれば専門家のサポートを受けることも選択肢の一つです。あなたたち夫婦にとって最良の道を見つけるために、今できることから一歩踏み出してみてください。

藤上 礼子のイメージ
ブログ編集者
藤上 礼子
藤上礼子弁護士は、2016年より当事務所で離婚問題に特化した法律サービスを提供しています。約9年にわたる豊富な経験を活かし、依頼者一人ひとりの状況に真摯に向き合い、最適な解決策を導き出すことを信条としています。ブログ編集者としても、法律知識をわかりやすくお伝えし、離婚に悩む方々の不安を少しでも和らげたいと活動中です。
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