共有財産とは?離婚時に迷いやすい特有財産との違いと分与の考え方

あなたが結婚して築いた家や貯金が離婚時にどう分けられるか考えたことはありますか?夫婦で一緒に購入した車や投資用不動産の所有権について疑問を持ったことはありませんか?これらの財産は「共有財産」と呼ばれ、複数の人が同時に所有権を持つ特別な形態です。

共有財産とは?基本的な定義と概念

共有財産は婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を指します。あなたが結婚後に購入した車や不動産は、名義に関わらず夫婦の共同所有として扱われます。

共有財産の法的な意味

民法第762条第2項では「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する」と規定されています。あなたが配偶者と結婚してから離婚するまでの期間に取得した財産は原則として共有財産になります。

預貯金口座の名義があなた個人でも、婚姻中に得た給与や賞与は共有財産です。配偶者が専業主婦(主夫)であっても、家事労働による貢献が認められ財産形成への寄与とみなされます

共有財産の範囲は広く、以下の財産が含まれます:

財産の種類具体例
現金・預貯金給与、賞与、退職金の一部
不動産マイホーム、投資用マンション
動産自動車、家具、家電製品
有価証券株式、投資信託、債券
保険生命保険の解約返戻金

離婚時には財産分与として原則2分の1ずつ分配されます。あなたの収入が配偶者より多くても、分配割合は変わりません。

特有財産との違い

特有財産とは、あなた個人に帰属する財産で共有財産から除外されます。結婚前から所有していた預金100万円や、親から相続した土地は特有財産として扱われます。

特有財産の判断基準は取得時期と取得原因です:

取得時期による区別

  • 婚姻前:あなたが独身時代に貯めた500万円の定期預金
  • 婚姻後:結婚3年目に購入した200万円の車

取得原因による区別

  • 相続・贈与:父親から相続した実家の土地建物
  • 個人的な理由:交通事故の慰謝料300万円

特有財産を証明するには領収書や契約書などの書類が必要です。あなたが結婚前に購入した腕時計を特有財産と主張する場合、購入日が分かるレシートを保管しておきます。

混同に注意が必要なケースもあります。結婚前の預金で結婚後に不動産を購入した場合、その不動産は特有財産です。ただし、ローンの返済に共有財産を使用すると、返済額に応じて共有財産の性質を帯びます。

共有財産に該当する財産の種類

共有財産には、婚姻期間中に夫婦が協力して築いたあらゆる財産が含まれます。名義が夫か妻の一方になっていても、実質的に夫婦の協力で形成された財産は共有財産として扱われます。

現金・預貯金・へそくり

あなたが婚姻中に貯めた預貯金は、口座名義に関わらず共有財産になります。月々の給料から少しずつ貯めた定期預金、ボーナスを積み立てた普通預金、すべてが財産分与の対象です。

へそくりも例外ではありません。台所の砂糖壺に隠した現金、クローゼットの奥にしまった封筒の中身、タンス預金として保管していた100万円も共有財産として扱われます。「自分だけの秘密の貯金」と思っていても、離婚協議では開示義務があります。

配偶者に内緒で貯めた資金であっても、その原資が婚姻中の収入であれば共有財産です。例えば、毎月の食費から節約した3,000円を5年間貯めた18万円、パート収入から密かに積み立てた50万円も分与対象となります。

不動産・自動車・家財道具

婚姻期間中に購入したマイホームは、登記名義が夫単独でも共有財産です。3,000万円で購入した一戸建て、4,500万円のマンション、いずれも夫婦の共同財産として扱われます。投資用アパートや駐車場用地も同様に共有財産となります。

自動車も購入時期が重要です。結婚後に購入した300万円のファミリーカー、150万円の軽自動車は共有財産ですが、独身時代から乗っていた車は特有財産として除外されます。

家財道具では、50万円の冷蔵庫、30万円のソファセット、15万円のダイニングテーブルなど、婚姻中に購入した家具・家電すべてが対象です。結婚祝いでもらった10万円の食器セットも共有財産に含まれます。ただし、実家から持参した家具や独身時代から使用していた家電は特有財産です。

有価証券・保険金・退職金

株式投資で得た利益も共有財産です。婚姻中に購入した株式100万円分、投資信託200万円分、仮想通貨50万円分すべてが財産分与の対象となります。配当金や売却益も同様に扱われます。

生命保険の解約返戻金は、婚姻期間に対応する部分が共有財産です。20年間加入している保険のうち、結婚後の10年分に相当する解約返戻金150万円が分与対象となります。学資保険や個人年金保険も同じ計算方法で算出されます。

退職金は婚姻期間の寄与度で計算されます。勤続30年で退職金2,000万円を受け取る場合、婚姻期間が20年なら約1,333万円が共有財産として扱われます。すでに受け取った退職金を預金している場合も、その金額は財産分与の対象です。

ローンなどの負債

住宅ローンの残債2,500万円も共有財産として扱われます。夫名義のローンでも、婚姻中に組んだものは夫婦共同の負債として財産分与で考慮されます。マイナスの財産も平等に分担することが原則です。

自動車ローン、教育ローン、カードローンも同様です。子どもの大学進学のために借りた教育ローン300万円、家族旅行で使ったクレジットカードのリボ払い残高50万円も共有負債となります。

ギャンブルや浪費による借金は例外的に扱われることがあります。パチンコで作った借金100万円、趣味の高額商品購入による債務200万円は、個人的な負債として扱われる可能性があります。裁判所は借金の目的や経緯を詳細に検討して判断します。

特有財産として扱われるもの

特有財産は夫婦の一方が単独で所有する財産であり、離婚時の財産分与の対象から除外されます。あなたが結婚前から持っていた預金や相続で受け取った不動産は、配偶者との共有財産にはなりません。

結婚前から所有していた財産

あなたが独身時代に貯めた500万円の定期預金は、結婚後も特有財産として扱われます。婚姻前に購入したマンションや自動車、株式投資で得た資産も同様です。たとえば、28歳で購入した投資用ワンルームマンションは、32歳で結婚しても特有財産のままです。

婚姻前の勤続年数に応じた退職金の部分も特有財産となります。あなたが入社5年目で結婚し、15年目で離婚した場合、最初の5年分に相当する退職金は特有財産として計算されます。

ただし、結婚後にその財産から生じた収益は扱いが異なります。婚姻前に購入した賃貸マンションの家賃収入は、婚姻期間中の収入として共有財産になる可能性があります。

相続・贈与により取得した財産

あなたの父親から相続した実家の土地建物は、婚姻期間中に取得しても特有財産です。母親から生前贈与された1,000万円の現金も、配偶者との共有財産にはなりません。

親族からの贈与には、結婚祝いと個人への贈与の区別が重要です。あなた個人宛ての贈与契約書があれば特有財産ですが、夫婦への結婚祝いとして受け取った100万円は共有財産となります。

遺産分割協議で取得した財産も特有財産です。兄弟3人で分割した祖父の遺産のうち、あなたが相続した株式2,000株は離婚時も個人資産として保護されます。生命保険金の受取人があなた個人に指定されている場合も、その保険金は特有財産として扱われます。

特有財産の証明方法

あなたの特有財産を証明するには、客観的な証拠書類が不可欠です。婚姻前の預貯金は、結婚日より前の日付が記載された通帳や取引履歴を保管してください。銀行に過去10年分の取引履歴を請求すれば、月額550円程度で発行してもらえます。

不動産の登記簿謄本で取得日を確認できます。あなたが婚姻前に購入した物件なら、売買契約書と登記完了証を揃えておきましょう。相続で取得した場合は、遺産分割協議書と相続登記の書類が証明になります。

贈与財産の証明には贈与契約書が最も有効です。契約書がない場合でも、振込記録と贈与税の申告書控えで証明可能です。あなたの親から300万円の援助を受けた際の振込明細と、その年の確定申告書類を保存しておくことで、特有財産として主張できます。

判断が難しいケース別解説

共有財産の判断は、財産の取得時期や資金源によって複雑になります。婚姻期間中の協力関係と財産形成への貢献度が判断の鍵となります。

結婚前に購入した不動産とローン

あなたが結婚前に購入したマンションのローンを、結婚後も支払い続けているケースを考えてみてください。購入時の頭金300万円は特有財産ですが、婚姻期間中に返済した金額は異なる扱いを受けます。

婚姻期間10年間で返済した1,200万円のうち、配偶者の収入から支払われた部分は共有財産として認定されます。専業主婦の配偶者がいる場合でも、家事労働による間接的貢献が認められ、返済額の50%が共有財産となります。

不動産の価値が3,000万円の場合、共有財産の割合は返済実績に基づいて計算されます。婚姻前の返済額500万円と頭金300万円は特有財産、婚姻中の返済額1,200万円は共有財産として、持分割合が決定されます。

登記簿上の名義があなた単独でも、実質的な共有持分が発生することを理解してください。離婚時には、この共有持分に相当する金銭を配偶者に支払う必要があります。

別居期間中に得た収入

あなたが配偶者と別居を開始した2023年4月以降の給与は、共有財産から除外されます。別居前の預貯金500万円は共有財産ですが、別居後に貯めた200万円は特有財産となります。

別居期間中のボーナス80万円も、夫婦の協力なく得た収入として特有財産に分類されます。あなたが別居後に始めた副業収入月10万円も同様の扱いを受けます。

別居開始時点の財産状況を明確にすることが重要です。銀行の取引明細書や給与明細書を保管し、別居日を証明できる書類を準備してください。賃貸契約書や住民票の移動記録が証拠となります。

別居前に発生した残業代が別居後に支払われた場合、その収入は共有財産として扱われる可能性があります。労働の時期と支払時期の違いに注意が必要です。

子ども名義の預貯金

あなたが子どもの教育資金として積み立てた学資保険300万円は、名義によって扱いが変わります。契約者があなたで受取人が子どもの場合、実質的な管理権限を考慮して判断されます。

祖父母から子どもへの贈与100万円は、子どもの特有財産として親の財産分与対象外となります。贈与契約書や振込記録が証明書類として機能します。

児童手当の累計額200万円を子ども名義で貯金している場合、使途が限定される公的給付として扱われます。家庭裁判所は子どもの福祉を優先し、親の共有財産とは認定しない傾向があります。

あなたが毎月3万円を子ども名義口座に振り込んでいても、実質的に親が管理している「名義預金」と判定される可能性があります。通帳やカードの保管者、引き出し履歴が判断材料となります。

離婚時の財産分与における共有財産

離婚時の財産分与では、婚姻期間中に築いた共有財産が対象となります。特有財産との区別や証明責任の所在が、あなたの受け取る財産額を左右します。

財産分与の基本的な割合

財産分与の割合は夫婦それぞれ2分の1ずつが原則です。あなたが専業主婦であっても、家事労働による貢献が認められるため基本割合は変わりません。

民法第768条に基づき、裁判所は「一切の事情」を考慮して分与額を決定します。収入差があっても、夫婦の協力によって形成された財産という考え方が基本となります。

例外的に割合が調整されるケースもあります:

  • 特別な才能による資産形成 – プロスポーツ選手や芸能人の収入
  • 経営能力による事業収益 – 個人の特殊技能で得た利益
  • ギャンブルや浪費 – 一方の散財により財産が減少した場合

あなたの配偶者が医師や弁護士であっても、通常の給与所得であれば2分の1の原則が適用されます。最高裁判所の判例(平成26年3月14日)でも、この原則が確認されています。

共有財産と特有財産の区別で迷った場合、共有財産と推定されます。特有財産だと主張するなら、あなたが証拠を提示する必要があります。

財産分与の具体的な方法

財産分与の手続きは段階的に進みます。まず当事者間の協議から始まり、合意できなければ家庭裁判所の調停・審判へと移行します。

協議による分与方法:

  • 現金での清算 – 預貯金を分配
  • 現物分割 – 不動産や車を分ける
  • 代償分割 – 一方が現物を取得し、他方に金銭を支払う
  • 換価分割 – 売却して代金を分配

あなたが住宅ローン付きの自宅に住み続ける場合、ローン残高と不動産評価額の差額(実質的価値)を基準に分与額が計算されます。例えば、評価額3,000万円でローン残高1,000万円なら、実質価値2,000万円の半分1,000万円があなたの取り分となります。

調停では調停委員が仲介し、約3〜6ヶ月で解決を目指します。審判に移行すると裁判官が判断を下します。

財産分与請求権には時効があります。離婚成立から2年以内に請求しなければ権利を失います。離婚届提出前に財産分与について取り決めることが賢明です。

共有財産のトラブルと対処法

共有財産を巡るトラブルは離婚協議の長期化を招き、精神的・経済的負担を増大させます。配偶者の不正行為への適切な対処法を理解することで、あなたの正当な権利を守ることができます。

配偶者による使い込みへの対応

あなたの配偶者が共有財産を無断で使い込んだ場合、離婚時の財産分与で取り戻すことができます。銀行の取引履歴を確認し、婚姻期間中の不自然な出金記録を特定してください。100万円以上の高額な引き出しや頻繁な現金化は使い込みの証拠となります。

使い込まれた金額は財産分与時に相手の取り分から差し引かれます。配偶者が500万円を使い込んだ場合、その金額を相手が既に受け取ったものとして計算します。弁護士に相談すれば、使い込みの立証方法や請求手続きについて具体的なアドバイスを得られます。

民法第762条に基づく夫婦の財産管理権を侵害する行為として、不法行為による損害賠償請求も可能です。証拠保全のため、通帳のコピーやクレジットカードの明細書を確保してください。金融機関に取引履歴の開示を請求する権利もあなたにはあります。

財産隠しの発見と調査方法

財産隠しの兆候を見逃さないでください。給与明細と預金残高の不一致、新規口座の開設、親族名義での資産移転は典型的な隠匿パターンです。あなたは弁護士会照会制度を利用して、配偶者の預金口座や証券口座を調査できます。

金融機関への調査嘱託申立てにより、過去5年分の取引履歴を取得できます。調査費用は1機関あたり約3万円から5万円です。税務署への情報開示請求で、配偶者の確定申告書から隠し財産を発見することもあります。

不動産の隠匿は登記簿謄本の取得で確認できます。法務局で1通600円の手数料を支払えば、全国どこの不動産でも調査可能です。生命保険の解約返戻金や退職金の存在も、勤務先への照会で明らかになります。探偵事務所や資産調査専門業者への依頼も選択肢の一つですが、費用は30万円から100万円程度かかります。

予防策と保全措置

離婚を決意したら、すぐに財産目録を作成してください。預貯金通帳、不動産登記簿、有価証券の残高証明書をコピーし、別居前に証拠を確保します。共有財産の処分を防ぐため、家庭裁判所に仮差押えや処分禁止の仮処分を申し立てることができます。

夫婦財産契約を公正証書で作成すれば、財産の帰属を明確にできます。作成費用は5万円から10万円程度です。毎月の家計簿をつけ、大きな支出には双方の同意を得るルールを設定してください。

銀行口座は夫婦それぞれの名義で管理し、共同生活費用の口座を別途設けます。不動産購入時は持分割合を登記簿に明記し、出資割合を証明する書類を保管してください。定期的に財産状況を開示し合うことで、トラブルを未然に防げます。

まとめ

共有財産と特有財産の区別を正確に理解することで、あなたの権利を適切に守ることができます。離婚時の財産分与では感情的になりがちですが、冷静に証拠を集め、計画的に準備を進めることが重要です。

配偶者との話し合いが難航する場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。専門家のサポートを受けることで、あなたが見落としている財産や権利を発見できる可能性があります。

財産分与請求権の時効は2年と短いため、迅速な行動が求められます。今後の生活設計のためにも、あなたが築いてきた財産について今一度整理し、必要な書類を準備しておくことが大切です。適切な知識と準備があれば、公平な財産分与を実現し、新たな人生のスタートを切ることができるでしょう。

藤上 礼子のイメージ
ブログ編集者
藤上 礼子
藤上礼子弁護士は、2016年より当事務所で離婚問題に特化した法律サービスを提供しています。約9年にわたる豊富な経験を活かし、依頼者一人ひとりの状況に真摯に向き合い、最適な解決策を導き出すことを信条としています。ブログ編集者としても、法律知識をわかりやすくお伝えし、離婚に悩む方々の不安を少しでも和らげたいと活動中です。
離婚問題に関するコラム記事

BLOG

PAGE TOP