経済的DVとは?生活費が足りない時の対処法と脱却への完全ガイド

あなたのパートナーが給料日になっても生活費を渡さない。買い物のレシートを細かくチェックされ、必要な支出さえ責められる。こんな状況に心当たりはありませんか?これは経済的DVと呼ばれる深刻な問題です。

経済的DVは身体的暴力とは違い、外から見えにくい虐待です。配偶者が家計を完全に管理し、あなたの経済的自由を奪うことで支配関係を作り出します。生活費不足で困っているのに相談できない、仕事を辞めさせられた、借金を勝手に作られた。こうした状況は決してあなたの責任ではありません。

経済的DVとは?定義と特徴

経済的DVは配偶者やパートナーがお金を使って相手を支配する形態の暴力です。被害者の7割以上が女性で、年間約3万件の相談が寄せられています。

経済的DVの具体的な行為

あなたの財布から現金を抜き取られたことはありませんか。経済的DVの加害者は月々の生活費として1万円しか渡さず、残りの給料を自分の趣味に使います。買い物のレシートを1枚ずつチェックし「なぜ298円の牛乳を買ったのか」と詰問します。

クレジットカードを取り上げられ、銀行口座の暗証番号を変更されます。あなたが働きたいと伝えると「誰の金で生活できていると思っているんだ」と怒鳴られます。実家への仕送りを禁止され、友人との食事代500円さえ許可が必要になります。

内閣府の調査によると、被害者の45%が「生活費を渡されない」、38%が「貯金を勝手に使われる」、27%が「借金を強要される」経験をしています。あなたの名義で消費者金融から50万円を借りられ、返済だけを押し付けられるケースも報告されています。

通常のDVとの違い

身体的DVの痣と違い、経済的DVの傷は目に見えません。あなたが友人に「夫が生活費をくれない」と相談しても「夫婦の問題」として片付けられます。警察に相談しても「民事不介入」と言われ、介入を拒否されることがあります。

経済的DVは段階的に進行します。最初は「君のためを思って家計管理する」と優しく始まり、3ヶ月後には通帳を没収されます。6ヶ月後にはパート収入も管理され、1年後には実家との金銭的な連絡も断たれます。

身体的暴力の被害者の約6割が経済的DVも受けています。殴られた後に「治療費は自分で払え」と言われ、病院に行けないあなたがいます。離婚したくても、弁護士費用の3万円すら用意できません。経済的自立を奪われることで、逃げ出すことが物理的に不可能になります。

経済的DVのチェックリスト

経済的DVは目に見えにくい暴力です。あなたの状況が該当するか、以下のチェック項目で確認できます。

生活費が不足している場合の判断基準

毎月の家賃を払うために親から借金している。子どもの給食費を3ヶ月滞納している。これらの状況に心当たりがあれば、経済的DVの可能性があります。

生活費不足の判断基準は「貯金の切り崩し」「親族からの援助」「借金」の3つです。配偶者の月収が30万円あるのに、あなたに渡される生活費が5万円だけ。食費と日用品で消えてしまい、子どもの習い事代や医療費が払えない。このような状態が2ヶ月以上続いているなら、明確な経済的DVです。

具体的な証拠として家計簿を3ヶ月分記録します。レシート、通帳のコピー、借用書など金銭の流れがわかる書類をすべて保管してください。弁護士への相談時、「月収40万円の夫から生活費8万円しかもらえず、残り32万円の使途が不明」といった具体的数字を示せます。

内閣府の調査では、被害者の72%が「生活に必要な金銭を渡されない」経験をしています。あなたの預金残高が月1万円ずつ減っているなら、それは異常な状況です。

共働き世帯における経済的DV

あなたの年収400万円、配偶者の年収600万円。それなのに家計用口座には月10万円しか入金されない。共働きでも経済的DVは起こります。

収入があるあなたに「お前の給料は全額家計に入れろ」と要求し、配偶者自身の収入は一切開示しない。給与明細を見せてもらったことがない。クレジットカードの明細書を隠される。これらは典型的な経済的支配です。

共働き世帯の経済的DV被害者の約6割が「自分の収入を自由に使えない」と回答しています。あなたのボーナス30万円を配偶者が勝手に使い、「家族のためだ」と正当化する。友人とのランチ代1,500円さえ許可を求めなければならない。

法的には、婚姻中に得た収入は夫婦共有財産です。しかし一方的な管理や使途不明金の存在は婚姻費用分担義務違反にあたります。家庭裁判所への調停申立てで、適正な生活費を請求できます。月収の3分の1程度が妥当な生活費の目安となります。

生活費が足りない場合の緊急対処法

経済的DVで生活費が不足した時、あなたには複数の選択肢があります。公的制度の活用から身近な人への相談まで、今すぐ実行できる具体的な方法を紹介します。

1. 婚姻費用の請求方法

配偶者に婚姻費用を請求する権利があなたにはあります。月収30万円の配偶者と収入ゼロのあなたの場合、月額10〜14万円程度の婚姻費用が認められるケースが多いです。

家庭裁判所への調停申立てから始めます。申立書と収入証明書を準備し、申立手数料1,200円と切手代約800円を用意します。裁判所の窓口で書類をもらい、記入例を見ながら作成できます。

調停では調停委員2名が間に入り、双方の話を聞きます。第1回調停は申立てから約1〜2か月後に開かれ、平均3〜4回の調停で合意に至ります。合意できない場合は審判に移行し、裁判官が金額を決定します。

緊急性が高い場合、「審判前の保全処分」を申請できます。通常の手続きより早く、申立てから2〜3週間で仮の支払い命令が出ます。相手が支払わない場合、給与や預金の差し押さえも可能です。

弁護士に依頼せず自分で手続きすることも可能ですが、法テラスでは収入が一定以下なら無料相談を3回まで受けられます。

2. 公的支援制度の活用

今月の家賃が払えない時、住宅確保給付金が家賃相当額を最大9か月支給します。東京23区なら単身世帯で月額53,700円、2人世帯で64,000円が上限です。ハローワークでの求職活動が条件ですが、月2回の職業相談と週1回の企業応募で要件を満たせます。

生活福祉資金貸付制度では、緊急小口資金として10万円を無利子で借りられます。申請から振込まで最短5日、返済は据置期間2か月後から始まります。市区町村の社会福祉協議会で申請でき、必要書類は本人確認書類と住民票だけです。

児童手当は毎月15日に支給され、3歳未満は月15,000円、3歳〜中学生は10,000円受け取れます。配偶者と別居中なら、あなたが受給者変更の手続きをできます。

生活保護の申請も選択肢です。東京23区の単身世帯なら生活扶助約76,000円と住宅扶助53,700円で月額約13万円受給できます。預貯金が10万円以下なら申請可能で、決定まで14日以内と法律で定められています。

フードバンクでは米5kg、缶詰10個程度の食料を無料で受け取れます。全国約200か所にあり、身分証明書だけで利用できます。

3. 実家や親族への相談

実家への相談を躊躇するあなたの気持ちは理解できますが、親は子どもの危機を知らないことを後悔します。「お金がなくて食事を1日1回にしている」という具体的な状況を伝えれば、親の反応は変わります。

親族に相談する際は、借金ではなく「一時的な避難」として伝えます。期間を「3か月だけ」と区切り、その間に仕事を見つける計画を示せば、協力を得やすくなります。実際、経済的DV被害者の約4割が実家に避難して生活を立て直しています。

兄弟姉妹がいる場合、まず一番話しやすい人から相談します。「配偶者が生活費を渡してくれない」という事実を淡々と伝え、感情的にならずに現状を説明します。LINE やメールで状況を整理してから電話すると、冷静に話せます。

親戚の中で経済的に余裕がある人がいれば、保証人なしで借りられる可能性があります。返済計画書を作成し、月5,000円からでも返済の意思を示すことが信頼につながります。

実家が遠方でも、交通費を工面して一時的に帰省する価値はあります。片道の交通費だけ用意し、帰りは親に相談する方法もあります。

経済的DVへの段階的な対応策

経済的DVからの脱却には計画的な行動が不可欠です。あなたの状況に応じて、話し合いから法的措置まで段階的にアプローチを進めていく戦略を立てましょう。

配偶者との話し合いの進め方

午後7時、夕食後のテーブルで家計簿を広げる瞬間があなたの転機になります。感情的な対立を避けるため、具体的な証拠を準備してから話し合いに臨みます。レシート、銀行明細、家計簿など、過去3ヶ月分の支出記録を整理しておきましょう。

「今月の食費が2万円不足している」という具体的な数字を示すことで、相手は反論しづらくなります。話し合いの際は録音アプリを起動させておくと、後の証拠になる可能性があります。

最初の10分間で相手の反応を見極めてください。攻撃的な態度や無視する姿勢を見せた場合、それ以上の話し合いは危険です。経済的DV加害者の約7割は話し合いで改善しないという統計があります。

話し合いのタイミングは相手が落ち着いている週末の朝を選びます。子どもを実家に預けるなど、二人きりで話せる環境を作ることも重要です。改善の兆しが見えない場合は、次のステップへ進む準備を始めてください。

別居を検討する場合の準備

別居の決断をしたら、まず3ヶ月分の生活費として約30万円を確保する計画を立てます。実家への避難を検討している場合、事前に両親と具体的な期間や条件を話し合っておきましょう。

重要書類のコピーを取ることから始めます。通帳、保険証、年金手帳、子どもの母子手帳などを安全な場所に保管してください。スマートフォンで撮影したデータをクラウドに保存する方法も有効です。

仕事探しは別居前から開始します。ハローワークのオンラインサービスを活用すれば、配偶者に気づかれずに求人情報を収集できます。月収15万円以上の仕事を目標に、履歴書の準備を進めてください。

住居の確保には公営住宅の申請も選択肢に入れます。DV被害者向けの優先入居制度があり、通常より早く入居できる可能性があります。民間アパートを借りる場合、初期費用として家賃の4〜5ヶ月分(約20〜25万円)が必要になることを覚えておいてください。

法的手続きの選択肢

家庭裁判所への調停申立ては費用1,200円で開始できます。離婚調停と同時に婚姻費用分担請求を行うことで、別居中の生活費を確保できる可能性が高まります。

弁護士への相談は初回30分5,000円程度が相場ですが、法テラスを利用すれば無料相談も可能です。年収が一定以下の場合、弁護士費用の立替制度も利用できます。

公正証書の作成には約3〜5万円かかりますが、養育費や慰謝料の支払いが滞った場合に強制執行が可能になります。離婚協議書だけでは法的拘束力が弱いため、公正証書化することを強く推奨します。

手続き種類費用期間成功率
調停1,200円3〜6ヶ月約60%
訴訟13,000円〜6〜12ヶ月約80%
公正証書作成3〜5万円2週間

保護命令の申立ても選択肢の一つです。経済的DVと身体的暴力が併存している場合、接近禁止命令を得ることで安全を確保できます。

経済的DVの証拠収集方法

経済的DVの被害を立証するには客観的な証拠が不可欠です。証拠収集を始める前に、安全な場所で記録を保管する準備をしてください。

必要な書類と記録

あなたの手元にある家計簿を開くと、毎月の赤字が一目瞭然になります。レシートや領収書は生活費のやりくりを物語る重要な証拠です。預金通帳には配偶者からの振込額と日付が記録されており、生活費が途絶えた時期を特定できます。

経済的DVに関する発言を録音・録画することで、相手の支配的な言動を証明できます。スマートフォンの録音アプリを使えば、「お前に金を渡す価値はない」といった暴言を記録できます。DV相談機関での相談記録は第三者による客観的な証拠となります。配偶者暴力相談支援センターでは年間約3万件の経済的DV相談を受理しており、相談証明書を発行してもらえます。

医療機関の診断書も重要です。経済的DVによるストレスで不眠症やうつ病を発症した場合、医師の診断書が心身への影響を証明します。加害者の浪費については、クレジットカードの明細書や借用書、ギャンブルの領収書などを収集してください。日記やメモに日付と具体的な金額を記載することで、継続的な被害を立証できます。

証拠として有効なもの

生活費の振込が3ヶ月以上途絶えた通帳は、経済的DVの明確な証拠となります。家庭裁判所の調停では、振込履歴が婚姻費用の算定基準として採用されます。お金に関する暴言の録音データは、相手の支配的な態度を証明する強力な証拠です。「今月は5万円で生活しろ」といった具体的な金額を含む発言は特に重要です。

浪費を示すカード明細は、相手の経済的虐待を裏付けます。パチンコ店のATM利用履歴や高額な趣味用品の購入記録は、生活費を渡さない理由が浪費であることを証明します。警察への相談記録は公的機関による証拠として扱われます。相談受理番号と日時が記載された書類を保管してください。

LINEやメールでのやり取りも証拠になります。「お金が欲しければ土下座しろ」といったメッセージはスクリーンショットで保存してください。友人や親族の証言も有効です。あなたが親から借金をした事実や、子どもの給食費を滞納した状況を知る第三者の証言は、客観的な証拠として機能します。証拠収集は継続的に行い、複数の種類を組み合わせることで説得力が増します。

相談窓口と支援機関

経済的DVの被害から抜け出すには、適切な相談窓口と支援機関を活用することが重要です。あなたの状況に応じた支援を受けることで、安全な生活を取り戻せます。

公的相談窓口の活用方法

DV相談ナビ(#8008)に電話すると、24時間365日、専門相談員があなたの話を聞いてくれます。配偶者から「今月は3万円で生活しろ」と言われた時、あなたは震える手で受話器を握りしめるかもしれません。相談員は経済的DVの証拠収集方法や、緊急時の避難先を具体的に案内します。

自治体の福祉事務所では、生活保護申請の手続きを即日開始できます。窓口で「配偶者から生活費をもらえていない」と伝えれば、担当者は別室で詳しい事情を聞き取ります。申請から14日以内に審査結果が出て、認定されれば最低生活費として単身世帯で月額7~13万円(地域により異なる)が支給されます。

配偶者暴力相談支援センターでは、一時保護施設への入所手続きを当日中に完了できます。センターの相談員は、あなたの銀行通帳のコピーや録音データを証拠として整理し、弁護士への橋渡しも行います。児童扶養手当(月額4万3,070円~1万180円)の申請書類も、その場で作成をサポートしてもらえます。

専門家への相談タイミング

給料日から1週間経っても生活費が振り込まれない時点で、弁護士への相談を検討してください。あなたが冷蔵庫を開けて空っぽの野菜室を見つめる瞬間、それは法的措置を取るタイミングです。法テラスでは収入が一定以下の場合、弁護士費用を立て替えてもらえ、月5,000円からの分割払いが可能です。

配偶者から「お前に渡す金はない」と言われた録音データがあれば、家庭裁判所への婚姻費用分担調停の申立てが有効です。調停申立て費用は1,200円で、申立てから1~2か月で第1回調停が開かれます。調停委員は月収に応じた適正な婚姻費用(夫の年収500万円・妻無収入・子1人の場合、月額10~14万円)を算定します。

精神的に追い詰められて不眠や食欲不振が2週間以上続く場合、心療内科を受診してください。医師の診断書は経済的DVの重要な証拠となり、慰謝料請求(相場50~300万円)の根拠になります。初診料は3,000~5,000円程度で、自立支援医療制度を利用すれば医療費の自己負担が1割に軽減されます。

経済的DVと離婚を検討する場合

経済的DVによって生活が困窮している状況では、離婚という選択肢を真剣に考える時期が訪れます。法的な観点から経済的DVは明確な離婚事由となり、慰謝料や財産分与の請求も可能です。

離婚事由としての経済的DV

あなたの配偶者が生活費を渡さない行為は、民法第752条に定められた扶助義務の違反に該当します。家庭裁判所は経済的DVを「婚姻を継続し難い重大な事由」として認定し、離婚判決を下すケースが増えています。

証拠として提出する書類には、通帳の入金履歴、家計簿、借金の契約書が含まれます。特に生活費の振込が3ヶ月以上途絶えている通帳記録は、裁判官に強い印象を与えます。配偶者の年収が500万円以上あるにも関わらず、月3万円しか渡されていない事実を示すことで、経済的DVの悪質性を立証できます。

離婚調停では調停委員があなたの話を聞き、配偶者に対して適切な生活費の支払いを促します。調停が不成立になった場合でも、裁判で経済的DVを理由とした離婚請求が認められる可能性は約7割に達しています。弁護士に相談することで、あなたの状況に応じた最適な戦略を立案できます。

慰謝料・財産分与・養育費の請求

経済的DVの被害者であるあなたは、離婚時に慰謝料として50万円から300万円を請求できます。金額は被害期間や配偶者の収入によって変動し、5年以上の経済的DV被害では200万円以上の慰謝料が認められるケースが多数存在します。

財産分与では夫婦の共有財産を原則2分の1ずつ分配します。配偶者が隠し持っている預金口座や株式も調査対象となり、弁護士照会制度を活用することで金融機関から情報を取得できます。退職金の見込み額も財産分与の対象となるため、配偶者の勤務先に確認を取ることが重要です。

養育費は子ども1人あたり月額3万円から8万円が相場であり、配偶者の年収と子どもの人数によって算定されます。養育費の支払いが滞った場合、給与の差し押さえや預金口座の凍結といった強制執行が可能です。公正証書や調停調書を作成しておくことで、裁判を経ずに強制執行を申し立てられます。

まとめ

経済的DVは目に見えにくい暴力ですが、あなたの人生を確実に蝕んでいく深刻な問題です。生活費の不足や金銭的な支配に苦しんでいるなら、それは決してあなたのせいではありません。

今すぐ行動を起こすことが、あなたと家族の未来を守る第一歩となります。DV相談ナビ(#8008)への電話一本から、新しい人生が始まる可能性があります。証拠を集め、支援機関とつながり、必要なら法的措置も視野に入れてください。

あなたには幸せに生きる権利があります。経済的な自立と精神的な自由を取り戻すことは可能です。一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら、あなたらしい人生を再構築していってください。

藤上 礼子のイメージ
ブログ編集者
藤上 礼子
藤上礼子弁護士は、2016年より当事務所で離婚問題に特化した法律サービスを提供しています。約9年にわたる豊富な経験を活かし、依頼者一人ひとりの状況に真摯に向き合い、最適な解決策を導き出すことを信条としています。ブログ編集者としても、法律知識をわかりやすくお伝えし、離婚に悩む方々の不安を少しでも和らげたいと活動中です。
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