不倫は犯罪?不法行為と犯罪の違いは?慰謝料請求が認められるケースと法律上の扱い
配偶者の不倫を知ったとき、あなたはどのような法的措置を取れるか正確に理解していますか。「不倫は犯罪だ」と考える人も多いですが、実は日本の法律では不倫そのものは犯罪として扱われません。しかし、だからといって何の責任も問われないわけではないのです。
不倫は民法上の「不法行為」に該当し、慰謝料請求の対象となります。では、犯罪と不法行為は何が違うのでしょうか。
この記事では、不倫がなぜ犯罪ではないのか、どのような場合に法的責任が生じるのか、そして例外的に刑事責任が問われるケースまで、法律の専門的な視点から詳しく解説していきます。
目次
犯罪と不法行為の基本的な違い
まず、あなたが理解しておくべき最も重要な点は、「犯罪」と「不法行為」は法律上まったく異なる概念だということです。この違いを正確に把握することで、不倫問題への適切な対処法が見えてきます。
犯罪行為の定義と刑事責任
犯罪とは、刑法をはじめとする刑罰法規で処罰対象として定められた行為を指します。例えば、窃盗、詐欺、暴行など、これらは明確に法律で「これを行った者は懲役○年または罰金○万円に処する」といった形で規定されています。
犯罪を犯した場合、あなたは国家から刑事責任を問われることになります。検察官が起訴し、裁判所で有罪判決が下されれば、懲役、禁錮、罰金などの刑罰を受けることになるのです。これは社会秩序を維持し、公共の利益を守るための制度です。
重要なのは、犯罪は「罪刑法定主義」という原則に基づいているということ。つまり、法律で明文化されていない行為は、どんなに道徳的に問題があっても犯罪として処罰することはできません。
不法行為の定義と民事責任
一方、不法行為は民法709条に規定されている概念です。「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められています。
不法行為の特徴は、被害者と加害者という私人間の問題として扱われる点にあります。あなたが不法行為の被害を受けた場合、加害者に対して損害賠償を請求できますが、国が刑罰を科すことはありません。
例えば、交通事故で他人に怪我をさせた場合、過失による不法行為として治療費や慰謝料を支払う民事責任が生じます。ただし、危険運転致傷罪など刑法に該当する場合は、同時に刑事責任も問われることになります。
このように、犯罪は社会に対する責任、不法行為は被害者個人に対する責任という根本的な違いがあることを理解しておいてください。
不倫が犯罪ではない法的根拠
「不倫は犯罪ではない」この事実に驚く方も少なくありません。しかし、現在の日本法において、不倫そのものを処罰する刑事法は存在しないのです。その背景と、世界各国の状況を見ていきましょう。
姦通罪の廃止と現行法の立場
かつて日本にも「姦通罪」という犯罪が存在しました。明治時代から戦前まで、妻の不貞行為は刑法で処罰の対象とされていたのです。興味深いことに、この法律は妻の不貞のみを処罰し、夫の不貞は対象外という、明らかな男女不平等な内容でした。
1947年、日本国憲法の制定に伴い、男女平等の原則に反するとして姦通罪は廃止されました。以来70年以上、不倫を犯罪として処罰する法律は制定されていません。
現行法において「不倫」は、正確には「不貞行為」と呼ばれ、配偶者がいる者が配偶者以外の者と性的関係を持つことを指します。これは民法上の問題として扱われ、離婚事由や慰謝料請求の根拠にはなりますが、刑事罰の対象ではないのです。
罪刑法定主義の観点から言えば、法律で犯罪として規定されていない以上、不倫をどれだけ道徳的に非難されるべき行為だと考えても、刑事処罰することは不可能です。これは法治国家の基本原則であり、あなたの感情とは別に、法的には明確な線引きがなされているということを理解しておく必要があります。
諸外国における不倫の法的扱い
では、世界に目を向けるとどうでしょうか。実は、不倫の法的扱いは国によって大きく異なります。
中東のイスラム教国家では、不倫は今でも重大な犯罪として扱われています。サウジアラビアやイランでは、既婚者の不倫に対して石打ち刑や鞭打ち刑といった厳しい刑罰が科される場合があります。これらの国では、宗教法(シャリーア法)が国法として機能しており、不倫は神への背信行為として厳格に処罰されるのです。
アジアでも、韓国では2015年まで姦通罪が存在していました。フィリピンやインドネシアの一部地域でも、不倫は刑事罰の対象となっています。台湾でも2020年まで姦通罪がありましたが、憲法裁判所の違憲判決により廃止されました。
一方、欧米諸国では日本と同様、不倫は主に民事責任の問題として扱われます。アメリカの一部の州では形式的に姦通罪が残っていますが、実際に起訴されることはほぼありません。フランスやドイツなどヨーロッパ諸国でも、不倫は離婚事由にはなりますが、犯罪としては扱われません。
こうした国際比較から分かるのは、不倫の法的扱いは、その国の文化、宗教、歴史的背景に深く根ざしているということです。日本が不倫を犯罪としない選択をしているのは、個人の私生活への国家介入を最小限に留め、当事者間の民事的解決を重視する法制度の表れと言えるでしょう。
不倫が不法行為となる要件
不倫が犯罪ではないからといって、法的に何の問題もないわけではありません。民法上の不法行為として、明確な要件が定められています。あなたが不倫問題に直面した際、どのような場合に法的責任が生じるのか、詳しく見ていきましょう。
不貞行為の法的定義
法律上、「不貞行為」とは何を指すのでしょうか。裁判所の判例では、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を持つこと」と定義されています。
ここでポイントとなるのは「性的関係」という部分です。単なるデートや食事、手をつなぐ、キスをするといった行為だけでは、原則として不貞行為には該当しません。ただし、これらの行為が継続的で親密な関係を示す場合、「不適切な関係」として一定の法的評価を受ける可能性はあります。
最近では、オンライン上での親密なやり取りが問題となるケースも増えています。性的な内容のメッセージや画像の交換などは、物理的な性行為がなくても、夫婦関係を破綻させる行為として慰謝料請求の対象となる場合があります。
不法行為成立の具体的条件
不倫が民法上の不法行為として成立するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
1. 故意または過失の存在
相手が既婚者であることを知っていた(故意)、または通常の注意を払えば知り得た(過失)ことが必要です。あなたが相手の既婚の事実をまったく知らず、知り得る状況にもなかった場合は、不法行為責任を負わない可能性があります。
2. 権利侵害
配偶者の「婚姻共同生活の平和の維持という権利」を侵害することです。これは、夫婦が互いに貞操を守る義務に基づく権利であり、不貞行為はこの権利を直接的に侵害します。
3. 損害の発生
精神的苦痛という損害が発生していることが必要です。不貞行為による精神的苦痛は、通常の場合、その事実だけで認められます。
4. 因果関係
不貞行為と損害との間に相当因果関係が必要です。例えば、不貞行為が原因で夫婦関係が破綻し、離婚に至った場合などは、明確な因果関係が認められます。
これらの要件がすべて揃った場合、不倫をした配偶者とその相手方は、被害を受けた配偶者に対して連帯して慰謝料を支払う義務を負います。慰謝料の金額は、不貞行為の期間、回数、夫婦関係への影響度などを総合的に考慮して決定されます。
不法行為に該当しないケース
しかし、形式的には不貞行為に見えても、法的責任が生じないケースも存在します。
婚姻関係が破綻していた場合
最も重要なのは、不貞行為の時点で既に夫婦関係が破綻していたケースです。長期間の別居、離婚協議中、家庭内別居状態など、実質的に夫婦関係が終了していた場合、その後の性的関係は法的保護に値する権利を侵害しないとされます。
ただし、「破綻」の認定は慎重に行われます。単に夫婦仲が悪い、会話が少ないという程度では破綻とは認められません。客観的に見て修復不可能な状態であることが必要です。
相手が既婚者であることを知らなかった場合
あなたが交際相手から独身だと偽られ、それを信じる合理的な理由があった場合、故意・過失がないとして責任を免れる可能性があります。例えば、相手が指輪をしていない、独身だと明言していた、家族の話を一切しないなど、欺瞞的な行動があった場合です。
一回限りの関係で継続性がない場合
判例では、一回限りの性的関係でも不法行為は成立するとされています。しかし、慰謝料額は継続的な不倫関係と比べて低額になる傾向があります。
これらの例外的なケースに該当するかどうかは、個別の事情を詳細に検討する必要があります。あなたが当事者となった場合は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
不倫による法的リスクと社会的影響
不倫は犯罪ではないとはいえ、その代償は決して軽くありません。法的な責任から社会的な影響まで、あなたが知っておくべきリスクを具体的に解説します。
慰謝料請求の対象となるケース
不倫による慰謝料請求は、被害を受けた配偶者の重要な権利です。では、どのようなケースで、どの程度の慰謝料が認められるのでしょうか。
慰謝料の相場は、一般的に50万円から300万円程度とされています。しかし、これはあくまで目安であり、個別の事情により大きく変動します。
高額な慰謝料が認められやすいケース:
- 不倫期間が長期(1年以上)にわたる場合
- 不倫相手との間に子供が生まれた場合
- 不倫が原因で離婚に至った場合
- 不倫相手が積極的に誘惑した場合
- 夫婦に未成年の子供がいる場合
実際の裁判例では、10年以上の不倫関係で、相手との間に子供もいたケースで500万円の慰謝料が認められた事例もあります。
一方、慰謝料が減額される要因もあります。元々夫婦関係が良好でなかった、不倫期間が短い、深く反省し謝罪している、などの事情があれば、慰謝料額は低くなる傾向があります。
重要なのは、慰謝料請求には時効があるということ。不倫の事実と相手を知った時から3年、または不倫行為から20年で時効となります。あなたが請求する側なら、この期限を意識して行動する必要があります。
離婚事由としての不貞行為
民法770条は、裁判上の離婚事由を定めており、その第1号に「配偶者に不貞な行為があったとき」と明記されています。つまり、不貞行為は法定離婚事由の筆頭に挙げられているのです。
あなたの配偶者が不倫をした場合、相手が離婚を拒否しても、裁判所に離婚を認めてもらえる可能性が高いということです。ただし、以下の点に注意が必要です。
1. 証拠の重要性
不貞行為を理由に離婚を求める場合、その事実を証明する必要があります。LINEのやり取り、ホテルの領収書、興信所の調査報告書など、客観的な証拠を準備することが重要です。
2. 有責配偶者からの離婚請求の制限
不倫をした側(有責配偶者)からの離婚請求は、原則として認められません。ただし、別居期間が相当長期に及ぶ、未成年の子供がいない、相手配偶者が過酷な状況に置かれないなどの条件を満たせば、例外的に認められることもあります。
3. 財産分与への影響
不貞行為は離婚原因にはなりますが、財産分与の割合には原則として影響しません。財産分与は夫婦の共有財産を公平に分けるものであり、有責性とは別の問題として扱われます。
社会的信用への影響
法的責任以外にも、不倫は深刻な社会的影響をもたらす可能性があります。
職場での影響
多くの企業では、不倫は直接的な解雇事由にはなりません。しかし、社内不倫の場合は別です。業務に支障をきたす、職場の風紀を乱す、会社の信用を損なうなどの理由で、配置転換や降格、最悪の場合は懲戒処分の対象となることもあります。
特に公務員や教育関係者など、高い倫理観が求められる職業では、不倫が発覚した場合の社会的制裁は厳しくなる傾向があります。実際に、校長や教頭クラスの教育者が不倫により依願退職に追い込まれた事例は少なくありません。
人間関係への影響
不倫は家族関係を壊すだけでなく、友人関係、親族関係にも大きな影響を与えます。子供がいる場合、その心理的影響は計り知れません。親の不倫が原因で不登校になったり、対人関係に問題を抱えたりする子供も少なくないのです。
デジタル時代特有のリスク
現代では、SNSの普及により、不倫の事実が瞬時に拡散されるリスクもあります。一度ネット上に情報が流出すれば、完全に消去することは困難です。デジタルタトゥーとして、あなたの人生に長期間影響を与え続ける可能性があることを認識しておくべきでしょう。
例外的に不倫が犯罪となる場合
ここまで不倫は犯罪ではないと説明してきましたが、実は状況によっては刑事責任を問われるケースが存在します。あなたが思わぬ形で犯罪者となってしまわないよう、これらの例外をしっかりと理解しておいてください。
未成年者との関係
最も重大な例外は、相手が未成年者の場合です。たとえ本人の同意があったとしても、18歳未満の者との性的関係は、複数の法律により犯罪として処罰される可能性があります。
児童福祉法違反
児童(18歳未満)に淫行をさせる行為は、児童福祉法により処罰されます。これは相手の同意の有無に関わらず成立し、10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される重大な犯罪です。
青少年保護育成条例違反
各都道府県の青少年保護育成条例では、18歳未満の者との淫行を禁止しています。違反した場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることがあります。
強制性交等罪・強制わいせつ罪
13歳未満の者との性的行為は、同意の有無に関わらず強制性交等罪となり、5年以上の有期懲役という重い刑罰が科されます。また、13歳以上16歳未満の者についても、5歳以上年長の者との性的行為は処罰対象となります(2023年の刑法改正により新設)。
あなたが既婚者で、職場や習い事で出会った相手と関係を持つ場合、相手の年齢確認は必須です。「大人っぽく見えた」「年齢を偽られた」という言い訳は、通用しない場合が多いのです。
強制的な性的行為
不倫関係であっても、相手の意思に反して性的行為を強要すれば、当然犯罪となります。
強制性交等罪・準強制性交等罪
暴行や脅迫を用いて性交等をした場合は強制性交等罪、抗拒不能な状態に乗じた場合は準強制性交等罪となります。たとえ以前は合意の上での関係があったとしても、その時点で相手が拒否しているのに無理やり行為に及べば犯罪です。
最近では、「性的同意」の重要性が強調されています。継続的な不倫関係にあったとしても、その都度の同意が必要であり、相手が嫌がっているのに関係を強要することは許されません。
監護者性交等罪
18歳未満の者に対し、監護者としての影響力を利用して性的行為をした場合も犯罪となります。例えば、再婚相手の連れ子との関係などが該当します。
ストーカー行為への発展
不倫関係が終わった後、相手につきまとったり、執拗に連絡を取ったりする行為は、ストーカー規制法違反となる可能性があります。
ストーカー行為の定義
特定の者に対し、つきまとい、待ち伏せ、押し掛け、うろつき、無言電話、連続した電話・メール送信、汚物等の送付、名誉を害する事項の告知、性的羞恥心を害する事項の告知等を反復して行うことがストーカー行為に該当します。
不倫関係の清算がうまくいかず、相手や相手の配偶者に対してこれらの行為を行えば、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。禁止命令に違反した場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金とさらに重い処罰となります。
リベンジポルノの危険性
関係が終わった腹いせに、相手の性的な画像や動画をネット上に公開する「リベンジポルノ」も重大な犯罪です。私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律により、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
あなたが不倫関係にある場合、感情的になって相手を脅したり、つきまとったりすることは、単なる民事上の問題を刑事事件に発展させる危険な行為だということを肝に銘じておいてください。
不倫問題への対処で注意すべき違法行為
配偶者の不倫を疑ったとき、あなたは真実を知りたいと思うでしょう。しかし、証拠集めに躍起になるあまり、自分自身が犯罪者になってしまうケースが後を絶ちません。不倫問題への対処で陥りやすい違法行為について、詳しく解説します。
違法な証拠収集方法
不倫の証拠を掴もうとして、以下のような行為をしてしまうと、あなた自身が刑事責任を問われる可能性があります。
住居侵入罪
別居中の配偶者の家や、不倫相手の家に無断で侵入することは、住居侵入罪(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)に該当します。たとえ配偶者の浮気現場を押さえるためであっても、違法性は阻却されません。
合鍵を持っていても、別居後は居住者の承諾なく立ち入ることはできません。「まだ籍は抜いていないから」という理由は通用しないのです。
不正アクセス禁止法違反
配偶者のメールやSNSアカウントに無断でログインする行為は、不正アクセス禁止法違反となります。パスワードを知っていたとしても、本人の承諾なくアクセスすれば、3年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象です。
「夫婦だから」「以前は見せ合っていた」という事情があっても、無断でのアクセスは犯罪行為です。LINEの既読をつけてしまい、相手に気づかれるケースも多いので注意が必要です。
盗聴・盗撮
配偶者や不倫相手の会話を盗聴したり、行動を盗撮したりする行為も、状況によっては犯罪となります。
自宅内での録音・録画は、基本的に違法ではありませんが、相手の私的な空間(寝室、浴室など)での盗撮は、各都道府県の迷惑防止条例違反となる可能性があります。
GPSを無断で相手の車に取り付ける行為も、プライバシー侵害として損害賠償請求の対象となるほか、ストーカー規制法違反に問われる可能性があります。
違法収集証拠の問題点
仮に違法な方法で不倫の証拠を入手できたとしても、裁判で証拠として採用されない可能性があります。さらに、あなた自身が刑事告訴されたり、逆に損害賠償を請求されたりするリスクもあるのです。
正しい証拠収集の方法としては、探偵事務所への依頼、弁護士への相談、合法的な範囲での記録(日記、正当に入手したメールの保存など)があります。感情的にならず、法的に適切な方法を選択することが重要です。
名誉毀損や侮辱行為
不倫の事実を知って怒りを覚えるのは当然ですが、その怒りの表現方法を誤ると、あなたが加害者になってしまいます。
名誉毀損罪
不倫相手の職場や親族、SNS上で不倫の事実を公表する行為は、名誉毀損罪(3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金)に該当する可能性があります。
たとえ事実であっても、公然と人の社会的評価を低下させる行為は処罰対象です。「みんなに知ってもらいたい」という復讐心は理解できますが、法的には許されない行為なのです。
侮辱罪
不倫相手に対して「泥棒猫」「売春婦」などの侮辱的な言葉を浴びせる行為は、侮辱罪(1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料)となる可能性があります。
2022年の刑法改正により侮辱罪の法定刑が引き上げられ、ネット上での誹謗中傷も厳しく処罰されるようになりました。SNSやメッセージアプリでの発言も、証拠として残るため注意が必要です。
脅迫罪・恐喝罪
「不倫をばらす」「会社に言いふらす」などと脅す行為は脅迫罪(2年以下の懲役または30万円以下の罰金)、金銭を要求すれば恐喝罪(10年以下の懲役)に該当します。
慰謝料請求は正当な権利ですが、「300万円払わないと会社にばらす」といった脅迫的な要求方法は犯罪行為です。正当な慰謝料請求は、弁護士を通じて行うか、内容証明郵便で冷静に行うべきです。
暴行・傷害罪
感情が高ぶって相手に手を上げてしまえば、暴行罪(2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料)や傷害罪(15年以下の懲役または50万円以下の罰金)に問われます。
「カッとなって」という言い訳は通用しません。一度の暴力で、被害者から加害者に立場が逆転してしまうのです。
まとめ
ここまで、不倫と犯罪、不法行為の違いについて詳しく解説してきました。最後に、あなたが押さえておくべき重要なポイントを整理しましょう。
日本において不倫は犯罪ではありません。1947年に姦通罪が廃止されて以来、不倫そのものを処罰する刑事法は存在しないのです。これは罪刑法定主義という法治国家の基本原則に基づくもので、いくら道徳的に問題があると感じても、法律に規定がない以上、刑事処罰することはできません。
しかし、不倫は民法上の不法行為(不貞行為)として、明確に法的責任が生じます。配偶者がいる者が配偶者以外と性的関係を持った場合、被害を受けた配偶者は慰謝料請求が可能であり、離婚事由としても認められています。慰謝料額は50万円から300万円が相場ですが、個別の事情により大きく変動します。
そして忘れてはならないのが、例外的に刑事責任が生じるケースです。未成年者との性的関係、強制的な性的行為、ストーカー行為への発展など、不倫から派生する行為が犯罪となる可能性は十分にあります。特に相手が18歳未満の場合は、児童福祉法違反や青少年保護育成条例違反となり、重い刑罰が科される可能性があることを肝に銘じておいてください。
また、不倫問題への対処方法を誤ると、被害者であるはずのあなたが加害者になってしまうリスクもあります。違法な証拠収集、名誉毀損、脅迫など、感情的な行動は新たな法的トラブルを生む原因となります。
不倫問題は、当事者にとって極めて感情的になりやすい問題です。だからこそ、冷静に法的な枠組みを理解し、適切な対処をすることが重要なのです。
もしあなたが不倫問題の当事者となった場合, 加害者であれ被害者であれ, 早期に弁護士に相談することをお勧めします。法律の専門家のアドバイスを受けることで、感情的な行動による二次被害を防ぎ、適切な解決への道筋を見つけることができるでしょう。
不倫は犯罪ではないが、決して「許される行為」ではありません。法的責任、社会的責任、そして何より家族に対する責任。これらすべてを考慮した上で、あなた自身の行動を選択していただければと思います。法律は最低限のルールを定めているに過ぎず、真に大切なのは、人として誠実に生きることではないでしょうか。
