離婚方法の種類|それぞれの特徴と進め方を整理

結婚生活を続けることが難しいと感じたとき、あなたは離婚という選択肢を考えることになるかもしれません。しかし、離婚は単に「別れたい」と思うだけで成立するものではなく、日本の法律では明確な手続きが定められています。

日本における離婚方法は、一般的に協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚という4つの種類に分類されます。さらに裁判離婚の中には和解離婚認諾離婚といった細かい分類もあり、全体として6種類という見方もできます。

これらの方法は、それぞれ手続きの複雑さ、かかる時間や費用、そして必要な条件が大きく異なるため、あなたの状況に応じて適切な方法を選ぶ必要があります。

統計を見ると、日本の離婚の約90%は夫婦間の話し合いによる協議離婚で成立しており、調停離婚が8〜9%、裁判離婚が1%程度と続きます。審判離婚は年間100件程度と極めて稀です。この記事では、各離婚方法の特徴と手続きの流れを詳しく解説し、あなたが離婚を考える際に知っておくべき重要な情報を提供します。

離婚には何種類の方法があるのか

日本の民法では、離婚方法として協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4種類が定められています。この分類は、離婚に至るまでにどのような手続きを踏むか、誰がその離婚を認めるかという点で区別されています。

まず協議離婚は、夫婦が互いに話し合って離婚に合意し、役所に離婚届を提出することで成立する最も基本的な方法です。裁判所を通さないため、手続きが簡単で費用もほとんどかかりません。日本の離婚全体の約90%がこの協議離婚によって成立しているという事実は、多くの夫婦が裁判所の介入なしに離婚を決断していることを示しています。

次に調停離婚は、夫婦間の話し合いがうまくいかない場合に家庭裁判所に申し立てて、調停委員という第三者の仲介を受けながら離婚の条件を話し合う方法です。協議離婚の次に多く、全体の8〜9%を占めています。

審判離婚は、調停が不成立になった後、裁判官が職権で離婚を認める非常に稀な方法で、年間100件程度しか実施されません。最後に裁判離婚は、調停が不成立となった後に訴訟を起こし、裁判所が法的に離婚を認めるかを判断する方法で、全体の約1%を占めます。

裁判離婚の中には、訴訟の途中で夫婦が合意に達する「和解離婚」、相手方が離婚請求を受け入れる「認諾離婚」、そして裁判所が判決を下す「判決離婚」という3つのパターンがあります。そのため、これらを個別に数えると、離婚方法は全部で6種類とも言えるのです。

あなたがどの方法を選ぶかは、配偶者との関係性、離婚の条件に関する合意の有無、そして時間や費用の制約などによって決まります。協議離婚が最も速く安価ですが、相手が合意しなければ次の段階に進む必要があります。

協議離婚とは

協議離婚は、夫婦が互いに話し合い、離婚することに合意した上で、離婚届を市区町村役場に提出することで成立する離婚方法です。裁判所を通さないため、日本で最も多く選ばれている離婚の形態であり、全離婚の約90%がこの方法で成立しています。

協議離婚の最大の特徴は、その自由度の高さです。あなたと配偶者が離婚に同意しさえすれば、理由を問わず離婚できます。法定離婚事由のような厳格な条件は求められません。

また、親権や養育費、財産分与といった離婚条件についても、夫婦で自由に決めることができます。ただし、未成年の子どもがいる場合は、離婚届に親権者を明記する必要があり、この点だけは法的に義務付けられています。

協議離婚は、夫婦関係が比較的円満に終わる場合や、早期に新しい生活をスタートしたい場合に適しています。相手との話し合いが可能で、離婚条件について大きな対立がなければ、最もスムーズに離婚できる方法だと言えるでしょう。

協議離婚の手続きの流れ

協議離婚の手続きは、非常にシンプルです。まず、あなたと配偶者が離婚について話し合い、離婚すること自体に合意します。この段階で、親権者の指定、養育費、財産分与、慰謝料、面会交流など、離婚に伴う重要な事項についても話し合い、できる限り具体的な合意を形成しておくことが望ましいです。

口頭での合意だけでも法的には有効ですが、後日トラブルを避けるため、合意内容を書面に残しておくことを強くお勧めします。特に養育費や財産分与など金銭が関わる事項については、公正証書にしておくと、相手が約束を守らない場合に強制執行が可能になります。

次に、離婚届を作成します。離婚届は市区町村役場で入手できるほか、多くの自治体ではウェブサイトからダウンロードすることも可能です。必要事項を記入し、夫婦双方が署名・押印します。また、成人の証人2名の署名・押印も必要です。

最後に、完成した離婚届を市区町村役場の戸籍課に提出します。書類に不備がなければ、その場で受理され、離婚が成立します。離婚届の提出は、夫婦のどちらか一方だけでも可能ですが、双方の合意があることが前提です。

協議離婚のメリットとデメリット

協議離婚には、いくつかの明確なメリットがあります。最大の利点は、時間と費用を最小限に抑えられることです。裁判所を通さないため、手続きは離婚届の提出のみで完了します。弁護士を雇う必要もなく、裁判費用もかかりません。早ければ数日、遅くとも数週間で離婚が成立するため、精神的な負担も比較的軽いと言えるでしょう。

また、柔軟な条件設定が可能という点もメリットです。養育費や財産分与、面会交流の頻度など、あなたと配偶者の事情に合わせて自由に取り決めることができます。裁判所の判断を待つ必要がないため、創意工夫した解決策を見つけやすいのです。

さらに、プライバシーが守られるという利点もあります。裁判所での公開の場で離婚理由を述べる必要がないため、夫婦間の問題が第三者に知られることはありません。

一方で、協議離婚にはデメリットもあります。最も大きな問題は、相手が合意しなければ成立しないという点です。どちらか一方が離婚を拒否すれば、協議離婚は不可能になり、調停や裁判という次の段階に進まざるを得ません。

また、十分な話し合いをせずに離婚してしまうリスクもあります。離婚を早く済ませたいあまり、養育費や財産分与などの重要な取り決めを曖昧なままにしてしまうと、後日トラブルになることがあります。特に口頭での約束だけに頼っていると、相手が約束を守らない場合に法的な対抗手段が限られてしまいます。

さらに、一方が不利な条件を押し付けられる危険性もあります。夫婦間に力関係の差がある場合、交渉力の弱い側が不当に不利な条件で離婚に合意してしまうことがあるのです。こうした事態を避けるためには、協議離婚であっても弁護士に相談し、適正な条件であるかを確認することが重要です。

調停離婚とは

調停離婚は、夫婦間の話し合いでは離婚の合意に至らない場合に、家庭裁判所に申し立てて調停委員という第三者の仲介を受けながら離婚の条件を話し合う方法です。日本の離婚全体の約8〜9%がこの調停離婚によって成立しています。

調停離婚の特徴は、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、あくまで話し合いによる合意を目指す点にあります。

調停委員は通常2名(男女各1名)で構成され、裁判官とともに調停委員会を形成します。調停委員は法律の専門家だけでなく、心理学や社会福祉の分野に知見を持つ人が選ばれることもあり、夫婦の感情的な対立を和らげながら建設的な話し合いを促す役割を担います。

協議離婚が不調に終わった場合、日本では「調停前置主義」という原則があり、いきなり裁判を起こすことはできず、まず調停を経る必要があります。これは、できるだけ話し合いによる解決を優先し、裁判という対立的な手続きを最終手段とする考え方に基づいています。

調停離婚は、相手と直接顔を合わせて話すことが難しい場合や、第三者の客観的な視点を取り入れたい場合に適しています。また、離婚条件について意見の相違があるものの、裁判までは望まないという状況でも有効な選択肢です。

調停離婚の手続きの流れ

調停離婚の手続きは、まず家庭裁判所への申し立てから始まります。あなたが申立人となる場合、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(または夫婦が合意で定めた家庭裁判所)に「夫婦関係調整調停申立書」を提出します。申立書には離婚を求める理由、争点となる事項(親権、養育費、財産分与など)を記載します。

申し立て時には、夫婦の戸籍謄本や申立手数料(収入印紙1,200円程度)、連絡用の郵便切手などが必要です。必要書類は裁判所のウェブサイトで確認できます。

申し立てが受理されると、第1回調停期日が指定されます。通常、申し立てから1〜2ヶ月後に最初の調停が開かれます。調停は平日の日中に行われ、1回につき2時間程度かかります。

調停当日は、あなたと相手方は別々の待合室で待ち、交互に調停室に呼ばれて調停委員と話をします。直接顔を合わせることはほとんどありません。調停委員はそれぞれから事情を聞き、意見や要望を確認しながら、双方が納得できる解決策を探ります。

調停は通常、月に1回程度のペースで数回繰り返されます。回数を重ねるごとに論点が整理され、合意に向けて条件が詰められていきます。親権や養育費、財産分与など、すべての争点について合意に達すると、調停が成立します。

調停が成立すると、裁判所は「調停調書」を作成します。この調停調書は確定判決と同じ効力を持つため、相手が約束を守らない場合には強制執行が可能です。調停成立後、あなたは離婚届(調停調書の謄本を添付)を市区町村役場に提出し、正式に離婚が成立します。

一方、話し合いを続けても合意に至らない場合、調停は不成立となります。この場合、あなたは裁判離婚へと進むか、離婚を諦めるかを選択することになります。

調停離婚にかかる期間

調停離婚にかかる期間は、事案の複雑さや争点の数、夫婦の対立の程度によって大きく異なりますが、一般的には申し立ての準備から離婚成立まで約6ヶ月程度が目安とされています。

調停は月に1回程度のペースで開かれるため、3〜6回程度の調停期日を経て成立または不成立となるケースが多いです。争点が少なく、双方が歩み寄る姿勢を持っていれば、3〜4ヶ月で成立することもあります。逆に、親権や財産分与で激しく対立している場合、1年以上かかることも珍しくありません。

調停期日の間隔が1ヶ月程度開くのは、裁判所のスケジュールの都合だけでなく、夫婦双方が前回の調停内容を踏まえて考える時間を持つためでもあります。この期間を有効に活用し、弁護士と相談したり、必要な書類を準備したりすることが、調停を円滑に進めるためには重要です。

調停離婚は協議離婚よりも時間がかかりますが、裁判離婚に比べれば比較的短期間で解決できる方法です。また、第三者の仲介により冷静に話し合える環境が整うため、感情的な対立を避けながら適切な離婚条件を見つけやすいという利点があります。

審判離婚とは

審判離婚は、調停が不成立となった後、家庭裁判所の裁判官が職権で離婚を認める非常に特殊で稀な離婚方法です。日本全体で年間わずか100件程度しか実施されておらず、他の離婚方法と比べて極めて例外的な存在と言えます。

審判離婚は、夫婦が実質的に離婚の条件についてほぼ合意に達しているにもかかわらず、何らかの理由で調停を成立させることができない特殊な状況で用いられます。家事事件手続法第284条に基づき、裁判官が「調停が成立しないが、離婚を認めることが相当である」と判断した場合に、職権で審判を下すことができるのです。

審判離婚の重要な特徴は、当事者からの申し立てではなく、裁判官の判断によって行われる点です。また、審判に対しては、告知を受けてから2週間以内に異議申し立てができます。もし当事者のどちらかが異議を申し立てれば、審判は効力を失い、自動的に訴訟(裁判離婚)へと移行します。

この「異議申し立てで効力が失われる」という点が、審判離婚が極めて稀にしか使われない理由の一つです。せっかく裁判官が審判を下しても、一方が反対すればすぐに無効になってしまうため、実用性が低いのです。

審判離婚が適用される場合

審判離婚が適用されるのは、非常に限定的な状況です。典型的なケースとしては、以下のような場合が挙げられます。

まず、夫婦が離婚条件について実質的に合意しているが、一方が調停期日に出頭できない場合です。

例えば、相手が重い病気で入院していて調停に出席できない、海外に居住していて日本に来ることが困難である、あるいは単に調停の場に出ることを避けているといった状況です。このような場合、裁判官が提出された書面や既に行われた話し合いの内容から、実質的に合意が成立していると判断すれば、審判によって離婚を認めることがあります。

次に、些細な点だけが残っており、ほぼ合意が成立している場合です。親権や財産分与など主要な争点について合意ができているのに、面会交流の頻度など細かい点だけで意見が分かれているといった状況では、裁判官が合理的な条件を示して審判を下すことがあります。

また、早期に離婚を成立させる必要性が高い場合も、審判離婚が検討されることがあります。例えば、一方が重病で余命が限られており、離婚を早く成立させる必要がある、あるいは子どもの進学など時間的制約がある状況です。

ただし、審判離婚は当事者の一方でも異議を申し立てれば効力を失うため、実際には双方が審判の内容を受け入れる見込みがある場合にのみ有効です。そのため、裁判官も審判離婚を下すことには慎重であり、大半のケースでは調停不成立として終了し、訴訟へと進むことになります。

あなたが調停中で、相手が出頭しないなどの事情がある場合、弁護士に相談して審判離婚の可能性を探ることもできますが、現実的には調停の成立を目指すか、訴訟に進む準備をすることの方が確実でしょう。

裁判離婚とは

裁判離婚は、調停が不成立に終わった後、家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、裁判所の判決によって離婚を成立させる方法です。日本の離婚全体の約1%がこの裁判離婚によって成立しています。協議や調停と異なり、裁判離婚では相手の同意がなくても、法律で定められた離婚事由を証明できれば離婚が認められます。

裁判離婚は、相手が離婚を頑なに拒否している場合や、離婚条件について激しく対立している場合の最終手段です。調停前置主義により、いきなり訴訟を起こすことはできず、必ず調停を経る必要があります(ただし、相手の所在不明など例外的な場合を除く)。

裁判離婚には、大きく分けて3つの終結パターンがあります。訴訟の途中で夫婦が合意に達する「和解離婚」、被告(訴えられた側)が原告の請求を全面的に認める「認諾離婚」、そして裁判所が判決を下す「判決離婚」です。実際には、訴訟を起こしても判決まで至るケースは少なく、多くは和解で終わります。

裁判離婚は時間と費用がかかる方法ですが、相手が不合理な主張をしている場合や、法的に明確な離婚事由がある場合には、あなたの権利を守るための重要な手段となります。

裁判離婚の手続きの流れ

裁判離婚の手続きは、まず離婚訴訟の提起から始まります。あなたが原告となる場合、相手方(被告)の住所地を管轄する家庭裁判所に「離婚請求訴訟」の訴状を提出します。訴状には、離婚を求める理由(法定離婚事由)、請求する内容(離婚だけでなく、親権、養育費、財産分与、慰謝料なども含む)を具体的に記載します。

訴状提出時には、訴訟費用として収入印紙(請求額に応じて異なるが、離婚のみの場合は13,000円程度)、郵便切手、戸籍謄本などの必要書類を添付します。また、離婚事由を証明するための証拠資料(メール、写真、診断書、財産関係の資料など)も提出します。

訴状が受理されると、裁判所は第1回口頭弁論期日を指定し、被告に訴状の副本を送達します。被告は答弁書を提出し、原告の主張に対する認否や反論を行います。

口頭弁論は、通常月に1回程度のペースで開かれます。第1回では、原告と被告がそれぞれの主張を述べます。その後、争点整理や証拠調べが行われ、必要に応じて証人尋問や当事者尋問が実施されます。証人尋問では、不貞行為の証人や親権に関する証人などが出廷し、質問に答えます。当事者尋問では、あなた自身や相手方が証言台に立って証言します。

裁判の途中で、裁判所から和解の勧告がなされることがよくあります。裁判所が双方の主張と証拠を検討し、「このまま判決に進むとこのような結果になる可能性が高い」という見通しを示した上で、和解による解決を提案するのです。双方が和解案に合意すれば、和解離婚として成立します。

和解が成立しない場合、裁判所は判決を下します。判決では、離婚を認めるか否か、親権者をどちらにするか、財産分与や慰謝料の額などが決定されます。判決に不服がある場合、判決書の送達を受けてから2週間以内に高等裁判所に控訴することができます。

第一審から判決確定まで、通常1年〜2年程度かかります。控訴や上告があればさらに時間がかかります。また、弁護士費用として数十万円から100万円以上かかることも珍しくありません。

法定離婚事由について

裁判離婚を成立させるためには、民法第770条第1項に定められた「法定離婚事由」のいずれかを証明する必要があります。単に「性格が合わない」「愛情がなくなった」という理由だけでは、相手が拒否すれば裁判で離婚を認めてもらうことはできません。

法定離婚事由は、以下の5つです。

1. 不貞行為

配偶者が他の異性と性的関係を持った場合です。単なる食事やデートだけでは不貞行為とは認められず、肉体関係があったことを証明する必要があります。証拠としては、ラブホテルの出入りを撮影した写真、メールやLINEのやり取り、探偵による調査報告書などが用いられます。不貞行為は最も明確な離婚事由の一つです。

2. 悪意の遺棄

正当な理由なく、配偶者としての義務(同居義務、協力義務、扶助義務)を果たさない場合です。例えば、一方的に家を出て行き生活費も渡さない、健康であるのに働かず家族を養わない、配偶者を追い出すといった行為が該当します。単なる別居だけでなく、相手を困らせる意図が認められる必要があります。

3. 3年以上の生死不明

配偶者の生死が3年以上明らかでない場合です。単に連絡が取れないだけでなく、生きているか死んでいるかが分からない状態が3年以上続いていることが必要です。失踪宣告とは異なり、比較的短期間で離婚できる制度です。

4. 回復の見込みがない強度の精神病

配偶者が重い精神病にかかり、回復の見込みがなく、夫婦としての協力関係を維持できない場合です。ただし、この事由による離婚は非常に厳格に判断され、単に精神疾患があるだけでは認められません。長期間の治療にもかかわらず回復の見込みがなく、かつ離婚後の配偶者の生活や療養について具体的な見通しがあることが求められます。

5. その他婚姻を継続し難い重大な事由

これは包括的な離婚事由で、実際の裁判では最も多く使われます。婚姻関係が破綻しており、回復の見込みがないと認められる場合です。具体的には、長期間の別居、DV(家庭内暴力)、モラルハラスメント、性格の不一致が極度に達した場合、性的不調和、配偶者の親族との不和、過度の宗教活動、浪費・借金、犯罪行為などが該当し得ます。

この5号の事由では、単に一つの問題があるだけでなく、様々な事情を総合的に考慮して「婚姻関係が客観的に破綻している」と裁判所が判断できることが重要です。別居期間の長さは重要な判断要素となり、一般的に5年以上の別居があれば破綻が認められやすくなります。

また、民法第770条第2項では、これらの離婚事由があっても、裁判所は一切の事情を考慮して離婚を認めないこともできるとされています。

例えば、あなた自身が離婚原因を作った場合(有責配偶者)、原則として離婚請求は認められません。ただし、長期間の別居、未成熟の子がいない、離婚により相手が精神的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれないなどの条件を満たせば、有責配偶者からの請求でも離婚が認められることがあります。

裁判離婚を検討する場合、あなたの状況がどの法定離婚事由に該当するか、それを証明する証拠があるかを弁護士と相談して慎重に判断することが必要です。

和解離婚と認諾離婚

和解離婚と認諾離婚は、どちらも裁判離婚の一種ですが、判決によらずに訴訟が終結するパターンです。統計上は裁判離婚に含まれますが、当事者間の合意や受諾によって成立する点で、判決離婚とは性質が異なります。

和解離婚

和解離婚は、訴訟の途中で原告と被告が話し合い、離婚することと離婚条件について合意に達した場合に成立します。裁判所が和解案を提示することもあれば、当事者が自主的に和解を申し出ることもあります。和解が成立すると、裁判所は和解調書を作成し、この調書は確定判決と同じ効力を持ちます。

和解離婚の利点は、判決を待つよりも早く解決でき、双方が納得した内容で離婚できることです。裁判所から「このまま判決に進むと原告勝訴の可能性が高い」などと見通しを示されると、被告側が和解に応じやすくなります。また、和解では判決では命じられない柔軟な条件(例えば、謝罪文の交付、特定の約束など)を盛り込むこともできます。

実際の裁判離婚では、判決まで至るケースは少なく、多くが和解で終了します。これは、判決になると勝ち負けがはっきりし、控訴のリスクもあるため、裁判所も和解による解決を促すことが多いからです。

認諾離婚

認諾離婚は、被告(訴えられた側)が原告の請求を全面的に認めて受け入れる場合に成立します。被告が答弁書や口頭弁論で「原告の請求をすべて認める」と表明すると、裁判所は審理を終了し、原告の請求通りの判決を下します。

認諾離婚は、被告が離婚自体には異議がなく、原告が求める条件(親権、財産分与、慰謝料など)も受け入れられる場合に選択されます。例えば、自分の不貞行為が原因で配偶者から訴えられた場合、争っても勝ち目がないと判断して認諾することがあります。

認諾のメリットは、訴訟が早期に終結し、時間と費用を節約できることです。また、和解と異なり相手との交渉が不要なため、精神的負担も軽減されます。ただし、認諾は原告の請求を全面的に認めることになるため、条件について交渉の余地はありません。もし原告の請求額が不当に高いと感じる場合は、認諾ではなく和解を目指すべきでしょう。

あなたが訴訟の当事者となった場合、判決まで争うべきか、和解や認諾で早期解決を図るべきかは、証拠の強さ、経済的・時間的コスト、精神的負担などを総合的に考慮して決める必要があります。弁護士とよく相談し、最善の選択をしてください。

離婚時に決めておくべき重要事項

離婚方法にかかわらず、離婚する際にはいくつかの重要な事項を決めておく必要があります。これらを曖昧なままにしておくと、離婚後に深刻なトラブルが発生する可能性があります。

  • まず、親権です。未成年の子どもがいる場合、離婚届にはどちらが親権者になるかを必ず記載しなければなりません。親権者を決めずに離婚することはできません。親権には子どもの身上監護権(日常生活の世話や教育)と財産管理権が含まれます。日本では現在、単独親権制度が採用されており、離婚後は父母のどちらか一方が親権者となります。
  • 次に、養育費です。親権を持たない親も、子どもの生活費や教育費を分担する義務があります。養育費の金額は、双方の収入、子どもの年齢や人数などを考慮して決めます。裁判所が公表している「養育費算定表」を参考にすることが一般的です。養育費は子どもが成人するまで(または大学卒業まで)支払われるのが通常です。
  • 面会交流も重要な事項です。親権を持たない親にも子どもと会う権利があり、子どもにも両親と交流する権利があります。月に何回、どのような方法で面会するか、宿泊を伴うかなどを具体的に決めておくとトラブルを防げます。
  • 財産分与は、結婚期間中に夫婦で築いた財産を離婚時に分配することです。預貯金、不動産、車、退職金などが対象となります。基本的に2分の1ずつ分けるのが原則ですが、それぞれの貢献度によって割合が変わることもあります。
  • 慰謝料は、離婚原因を作った側(不貞行為やDVなど)に対して、精神的苦痛の賠償として請求できるものです。すべての離婚で発生するわけではなく、相手に明確な有責性がある場合に限られます。金額は離婚原因の内容、婚姻期間、相手の資力などによって決まります。
  • 最後に、年金分割です。厚生年金の婚姻期間中の保険料納付記録を分割できる制度で、離婚後の生活保障に重要です。

これらの事項について、協議離婚では夫婦で自由に決められますが、トラブル防止のため公正証書にしておくことを強くお勧めします。調停や裁判では、調停調書や判決で明確に定められるため、後日の紛争リスクは低くなります。

財産分与と年金分割について詳しく解説

財産分与

財産分与は、離婚時の重要な清算手続きです。結婚後に夫婦が協力して築いた財産は、名義がどちらであっても夫婦の共有財産とみなされ、離婚時に分配されます。

対象となる財産には、現金・預貯金、不動産(自宅など)、自動車、株式や投資信託、生命保険の解約返戻金、退職金(退職時期が近い場合)などがあります。一方、結婚前から各自が持っていた財産や相続・贈与で得た財産は「特有財産」として財産分与の対象外です。

財産分与の割合は、原則として2分の1ずつです。これは「夫婦は婚姻中、対等な立場で協力して財産を形成した」という考え方に基づいています。専業主婦(主夫)であっても、家事や育児を担当することで配偶者の仕事を支えたと評価されるため、2分の1の権利があります

ただし、一方が特別な才能や努力によって高額な収入を得た場合(経営者、医師、芸能人など)や、財産形成への寄与度に明らかな差がある場合は、割合が修正されることもあります。

財産分与を行う際は、まず財産目録を作成し、すべての財産と負債をリストアップします。不動産の評価は不動産会社に査定を依頼し、退職金は現時点で退職した場合の金額を計算します。住宅ローンなどの負債も考慮し、純資産を算出した上で分配します。

財産分与の請求権は、離婚成立後2年以内に行使しないと時効により消滅してしまうため、注意が必要です。

年金分割

年金分割は、離婚時に厚生年金の保険料納付記録を分割する制度です。特に専業主婦(主夫)や収入が少なかった配偶者にとって、老後の生活を支える重要な仕組みです。

年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。

  • 合意分割は、婚姻期間中の厚生年金記録を夫婦の合意または裁判所の決定によって分割する制度です。分割の割合は2分の1が上限で、実際にも2分の1とされることがほとんどです。この制度を利用するには、離婚から2年以内に年金事務所で手続きを行う必要があります。
  • 3号分割は、2008年4月以降の第3号被保険者(専業主婦・主夫など)期間について、相手の合意なしに自動的に2分の1の分割を受けられる制度です。ただし、2008年4月より前の期間については合意分割の対象となります。

年金分割を行うには、まず年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取得し、分割の対象となる期間や按分割合の範囲を確認します。その後、離婚時に相手と分割割合について合意し(通常は公正証書や調停調書に記載)、離婚成立後に年金事務所で分割請求の手続きを行います。

年金分割は将来受け取る年金額に影響するものであり、離婚時に現金がもらえるわけではありません。しかし、老後の経済的安定にとって非常に重要な制度ですので、必ず請求することをお勧めします。

養育費と面会交流について詳しく解説

養育費

養育費は、離婚後に子どもを監護していない親(非監護親)が、子どもの生活費や教育費として監護している親(監護親)に支払うお金です。親権を持たない親にも、子どもを扶養する義務があるため、養育費の支払いは法律上の義務です。

養育費の金額は、双方の収入、子どもの年齢と人数、生活水準などを総合的に考慮して決定されます。実務では、裁判所が公表している「養育費算定表」が広く使われています。この算定表では、支払う側と受け取る側の年収、子どもの年齢と人数をもとに、標準的な養育費の月額が算出されます。

例えば、支払う側の年収が500万円、受け取る側の年収が200万円、子どもが1人(14歳以下)の場合、養育費は月額4〜6万円程度が目安となります。ただし、子どもの特別な教育費(私立学校や習い事)や医療費が必要な場合は、算定表の金額に加算されることもあります。

養育費の支払期間は、通常は子どもが成人(18歳または20歳)するまでですが、大学進学を前提とする場合は22歳(大学卒業時)までとすることもあります。この点は、離婚時に明確に取り決めておくことが重要です。

養育費の取り決めは口約束だけでなく、公正証書にしておくことを強くお勧めします。公正証書には「強制執行認諾条項」を付けることで、相手が支払わなくなった場合に、裁判を経ずに給与や預金の差し押さえができます。調停や裁判で決まった場合は、調停調書や判決に基づいて同様に強制執行が可能です。

もし相手が養育費を支払わない場合、家庭裁判所に履行勧告や履行命令を申し立てることもできます。また、2020年に改正された民事執行法により、相手の勤務先や預金口座の情報を裁判所を通じて調査できるようになり、強制執行がしやすくなりました。

面会交流

面会交流は、離婚後に子どもと離れて暮らす親が、子どもと定期的に会ったり連絡を取ったりすることです。面会交流は、親の権利であると同時に、子どもが両親から愛情を受け、健全に成育するための子どもの権利でもあります。

面会交流の内容は、頻度(月1回、月2回など)、日時・場所、面会方法(直接会う、宿泊を伴うかなど)、連絡方法(電話、メール、ビデオ通話など)などを具体的に決めます。子どもの年齢や生活リズム、学校行事などを考慮して、柔軟に設定することが大切です。

面会交流を円滑に行うためには、いくつかの注意点があります。まず、子どもの意思を最優先することです。無理やり会わせるのではなく、子どもが会いたいと思える環境を作ることが重要です。また、面会時に相手の悪口を言わない、子どもを通じて元配偶者を責めないなど、子どもを大人の対立に巻き込まないよう注意が必要です。

相手が面会交流に協力しない場合、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てることができます。調停や審判で面会交流が決まったにもかかわらず相手が応じない場合は、履行勧告や間接強制(金銭的ペナルティ)を求めることも可能です。

逆に、相手からのDVがあった場合や、子どもが強く拒絶している場合など、面会交流が子どもの福祉に反すると認められるときは、面会を制限または停止することもできます。

養育費と面会交流は、しばしば関連付けて考えられがちですが、法律上は別個の問題です。「養育費を払わないなら子どもに会わせない」「面会させないなら養育費を払わない」という主張は認められません。それぞれ独立した子どもの権利として尊重されるべきものです。

まとめ

離婚方法には協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚という4つの種類があり、それぞれ手続きの流れ、かかる時間、費用、必要な条件が異なります。あなたの状況に最も適した方法を選ぶことが、スムーズな離婚と新しい人生のスタートにつながります。

約90%の夫婦が選ぶ協議離婚は、速く安価に離婚できる反面、相手の合意が不可欠であり、取り決めを曖昧にしてしまうリスクもあります。調停離婚は第三者の仲介により冷静な話し合いができ、調停調書という法的効力のある文書が作成されます。

審判離婚は極めて稀ですが、特殊な事情がある場合に検討の余地があります。そして裁判離婚は、相手が拒否していても法定離婚事由を証明できれば離婚が認められる最終手段です。

どの方法を選ぶにせよ、親権、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割といった重要事項について、具体的かつ明確に取り決めておくことが不可欠です。特に子どもがいる場合、養育費や面会交流は子どもの将来に直接影響する問題ですので、子どもの利益を最優先に考えて決定してください。

離婚は人生の大きな転機であり、法律的にも感情的にも複雑な問題を伴います。一人で抱え込まず、弁護士などの専門家に相談しながら、あなたにとって最善の選択をすることをお勧めします。適切な準備と理解をもって手続きを進めることで、離婚後の新しい生活を前向きにスタートすることができるでしょう。

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ブログ編集者
藤上 礼子
藤上礼子弁護士は、2016年より当事務所で離婚問題に特化した法律サービスを提供しています。約9年にわたる豊富な経験を活かし、依頼者一人ひとりの状況に真摯に向き合い、最適な解決策を導き出すことを信条としています。ブログ編集者としても、法律知識をわかりやすくお伝えし、離婚に悩む方々の不安を少しでも和らげたいと活動中です。
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